第16話

由梨のへやのドアが開くことはなかった。


健吾は由梨の部屋の前で座り込んだ。

白々と辺りが明るくなり、夜が明けてきた。


由梨ははじめてのことに動揺していた。


極道の西園寺からのプロポーズ、そして思いもよらない熱烈な溺愛。


はじめてのキス、ドキドキする抱擁。


(どうして?私にそれだけの魅力があるとは思えない)


由梨は口ではあんな風に突っぱねたが、健吾に惹かれていった。


出掛けようとドアを開けるが動かない。


(えっ、なんで)


由梨は思いっきりドアを押した。


「痛え」


いきなり男性の声が聞こえて、覗き込んだ。


「西園寺さん」


健吾だった。


健吾は立ち上がり、頭を押さえている。


「何をしているんですか」


「いつの間にか寝ちまったんだな、由梨、仕事か、送っていってやるよ」

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