第12話

「お断りします」


「なぜだ」


「借金を西園寺さんに払って頂くわけにはいきません」


「東條と結婚するつもりか、不幸になるのは目に見えているだろう」


「それじゃあ、西園寺さんと結婚したら、私は幸せになれるんですか」


「ああ、俺は生涯由梨だけを愛し抜くと誓う」


由梨はこの時、西園寺について行きたいと思った。


でも、なんの確証もない。


西園寺のことは何も知らない。


しかも極道の言葉を信じるなんて、あり得ないことだ。


散々弄ばれて、どこかに売られたり、借金を払ってもらう代わりに、


キャバクラで働かされたりの人生が待っているだろう。


「さっき、私と初対面ではないと言ってましたが、どこで会ったのでしょう」


「五年前、俺の命を救ってくれたんだ」


由梨は驚いた。


命の恩人にどうして生涯の愛を誓えるの?


(私のことは何も知らないのに……)


それに由梨は記憶がなかった。

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