第6話

慌てて健吾の後を追ってきた裕也は、驚きを隠せずにいた。


(マジかよ、若頭、いきなりプロポーズしちゃったよ)


「あのう、訪問先を間違えているのではないでしょうか」


「お前は夕凪由梨だよな」


「はい、確かに私は夕凪由梨ですが、西園寺健吾さんは存じあげません」


「お前の借金、俺が払ってやる、だから俺と結婚しろ、俺は生涯お前だけを愛すると誓う」


衝撃的な健吾のプロポーズだった。


由梨はこの時、ドアの向こうの健吾の言葉を信じられずにいた。


(ヤクザの言う事なんて、誰が信じるの)


「とにかく、開けてくれ」


「お断りいたします、お帰りください」


健吾はドアの前でずっと動かなかった。


裕也は見かねて、健吾に一旦撤退するように促した。


しかし、健吾は裕也の言葉には耳を貸さない。


健吾は通路に座り込み、ドアが開くのを待っていた。


裕也はコンビニに行って、サンドウィッチと飲み物を買ってきた。


「若頭、食べ物買ってきました、腹が減っては戦はできぬって言いますからね」


「おお、お前気が効くな」

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