第八章 すれ違い

第55話

「蓮さん、私、蓮さんが好き」


「どうした?無理するな、じゃ切るぞ」


スマホが切れた。


この日帰宅した彼は、食事が終わるとすぐ自分の部屋に篭り、仕事を始めた。

深夜零時を回り、彼の部屋に様子を見に行くと、イスで仮眠を取っていた。


「蓮さん、もうおやすみになった方が……ベッドで寝てください、私と一緒が嫌なら私、ソファで寝ますから」


彼は目を覚まし呟いた。


「嫌な訳ないだろう、ベッドを共にしたら我慢出来なくなる、美希を抱きたくなっちまうからな」


思いがけず彼の本音が漏れた。

彼は我慢していたんだ、私が拒絶したから、私の心は彼にはないと思い込んだのである。




俺は美希に拒絶されて以来ベッドを共にしていない。


美希はまだあいつが好きなのか。


美希の気持ちは俺に対してないと言う事か。


俺達が夫婦になったのも、俺の強引な気持ちを美希が仕方なく受けてくれたからだ。


元々俺は美希に対して、溢れんばかりの愛情で接して二人の関係は始まった。

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