第54話

やっぱり私は嫌われたと確信した。

しかし、彼がわざとベッドには行かず、イスで寝ていた事など知る術はなかった。

彼が私から目を逸らしたのも、私への愛情が溢れて抱きしめたくなったからだった。


私達はこの時お互いにすれ違い、真実を見抜くことが出来なかった。


元彼の事件以来、私は一人で外出を禁じられた。


「美希、買い物は休みに一緒に行くから、それ以外は一歩も外に出るな、いいな」


「わかりました」


そうは言ったものの、ずっと部屋に篭りきりの状態はストレスが溜まって来た。


彼は忙しく、あれ以来ベッドを共にしていない。


もちろん、抱きしめることも、キスすることもなくなった。


ただ変わったことは毎日電話をくれるようになった。


「美希、大丈夫か、変わりないか」


「大丈夫です、蓮さんこそ大丈夫ですか、いつもイスで寝ていますけど、睡眠不足なんじゃないですか」


「俺は大丈夫だ、心配はいらない」


「はい」


そのあと会話が切れて沈黙が続いた、私は思わず心の中の気持ちを口に出してしまった。

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