第50話

嫌だったわけではない、これ以上進んで、もし彼に満足出来ないと嫌われたら、もう彼なしでは生きていけないと強く感じた。


部屋を出ると彼の姿はなかった。

私は嫌われたと思った、涙が溢れてきた。

その時ドアが開いて彼が戻って来た。


「蓮さん、ごめんなさい、私……」


「美希、ごめんな、嫌がることはしないって約束したのに、俺はあいつに嫉妬した、あいつはいいのになんで俺は駄目なのかって……そんなの決まってるよな、俺は美希に嫌われてるんだよな」


「違います、違うんです」


私はこれ以上何も言えなかった。


「飯食おうぜ、コンビニで買って来たから、今日はこれで済ますぞ」


「わざわざ買いに行ってくれたんですか」


私は彼に申し訳ない気持ちで、涙が溢れて止まらなかった。


いつもなら彼は私を抱きしめてくれるのだが、今日は抱きしめて貰えなかった。


私は彼に嫌われたと思い込んだのである。


夜寝る時も、いつもなら腕枕をしてくれるのに、今日は私に背を向けて眠ってしまった。

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