第44話
彼は一瞬怪訝そうな表情を浮かべたが、すぐに微笑んで「友達だよ」と私の肩に手を
置いて引き寄せた。
そして私の耳元で「彼女は美希だけだよ」と囁いた。
私は耳元にかかる彼の甘い吐息に、魔法にかかったかのような錯覚に陥った。
彼を信じようと何度も自分に言い聞かせて、頭に現れる妄想と闘っていた。
ある日、彼のマンションに誘われて、泊まることになった。
夕食の買い物を済ませて、彼とマンションまでの道のりを、手を繋いで歩いた。
この幸せがずっと続きますようにと願った。
マンションに着いて、食事の支度をする。
キッチンに向かっている私の背中から、彼の大きな腕が私を包み込む。
首筋に熱い彼の吐息がかかる。
私は思わず声が漏れた。
「美希、感じた?色っぽい声だ、なんか俺、興奮して来ちゃったな」
彼の方に向かされて、見つめ合った。
彼の唇が私の唇を塞ぐ。
身体が熱くなるのを感じて、頭がぼーっとしてきた。
そのまま、抱き抱えられて、ベッドルームへ運ばれた。
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