第43話

この時私は二十八歳、鏑木建設会社に勤務しており、寂しくお一人様の生活を送っていた。


彼は大学卒業後、父親の会社である飛鷹コーポレーションに就職し、次期社長の座が決まっていた。


「藤城、結婚は?」


「まだだよ、彼氏もいないんだから」


「へ?そうなんだ、意外だな」


彼からの意外と言う言葉に戸惑っている自分がいた。


戸惑いを隠すように話題を変えた。


「仕事はどう?」


「まあまあかな、彼氏いないなら俺と付き合ってよ」


彼の言葉に顔が赤くなるのを感じた。


「決まりな、今日から美希は俺の彼女だから」


急な展開に焦りを感じ、すぐにはこの状況を飲み込むことが出来ずにいた。


それから毎日彼とデートした。


大学の時、胸をときめかせた相手と六年越しに恋が実ったと、心弾む毎日だった。


でも、彼には他に女友達が沢山いた。


日に日にデートの回数が減っていった。


ある日彼と女性が一緒のところを見かけてしまった。


思い切って彼に聞いてみた。


「劉、この間一緒だった女性は誰?」

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