第37話

あの時たまたま居合わせたのがRHマイナスの私で輸血を申し出たのである。


あの日私は友達と買い物をして帰るところだった。


大通りに出てタクシーを拾おうとした時、目の前をオートバイが横滑りして、道路の植え込みに突っ込んだ。


バイクに乗っていた男性は投げ出され、頭を強く打ちつけた。


私は思わずきゃあ?っと声を上げて、顔を覆った。


辺りは騒然となり、私はその男性の元に駆け寄った。


「大丈夫ですか」

男性は顔をしかめて返事をしなかった。


すぐに救急車がやって来た。


男性は救急車に運び込まれた。


「一緒に乗ってください」


えっ?私?関係ないんだけど、救急隊員に言われるまま救急車に乗り込んだ。


男性は苦しそうな表情を見せていた。


私は思わず男性の手を握った。


そうすると、少しだけ苦しそうな表情が和らいだように見えた。


病院へ到着すると、男性は処置室へ運ばれた。


「ご家族の方はここでお待ちください」


「あのう、違うんですけど……」

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