天使のような人

 ミネルバ王立学園は、全寮制である。

 入学式が終わったその日の放課後に、部屋割りが発表された。

 二人一部屋のクラス混合。退学などの不祥事が起こらない限り、パートナーは卒業するまで変わらない。

 要するに、3年はその相手と過ごしていかなければならない。相性のいい者ならばいいのだが。


 指定された部屋に向かいながら、廊下の窓から望む、中庭の景色を目に映した。

 綺麗に手入れされた緑の間。いくつか東屋があるが、今は人影は見えない。


(あれ……?)


 誰もいないと思っていたのだが、やはりそこには誰かいた。

 純白のドレスを纏い、柔らかなブロンドを風に揺らして佇む一人の少女。


(天使?)


 一瞬本気でそう思った。見ていたら、翼でも生えてくるのではないかと。

 だが、その少女は程なくしてその場から静かに立ち去って行った。

 翼など、当然生えてこなかった。


(上級生かな)


 この学園の敷地内にいるということは、おそらく生徒か教師だろう。綺麗な人だったな。

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