第5話

薄暗い回廊を歩きながら、閻魔大王は考えていた。


この頃、地獄行きの魂が多すぎやしないか。


そりゃ勿論、地獄へ渡るべき生者など、現世にも幽世にもたんといる。

これまでも、天国行きにした死者よりも地獄行きにした死者の数の方が多い。

しかし、最近は地獄行きばかりを捌いているような気がする。


現にはそんなに善人が少ないのか。

死の間際くらい、仏の心になろうという輩はおらんのか。

地蔵菩薩は何をやっている。

現世の人間たちを極楽浄土へと導いてやるのがお前の仕事だろう。


仕事のストレスは、この場にいない己の片割れへと飛び火する。

きっと今頃、菩薩は現世で盛大にくしゃみをかましているだろう。ざまあみやがれ。

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