第6話

 カイト10歳になりました!

 2期生からはなんと、領都以外の子爵領内の村や町からも入学希望がちらほら出始め、3期生で更に増え4期生では領内ほぼ全ての子供達が集まるという事態になりました。おかげで大所帯すぎて来年度の受け入れ分の教室が足りず増築しております。さらにこの流れは辺境伯寄子貴族全土に拡がり王家も興味深々で見てるとかなんとか。


 俺達が6年生になる再来年には各校合同競技会みたいなのをやろうということになってます。うち以外は1~3年設立が遅れているので公平ではないんだけど、俺達の優秀さを見てもらって奮起してほしいということらしい。父も母もじいじも無詠唱だったので知らなかったけど、一般的には詠唱して術式を構築して打つからそんなぽんぽん打てないらしい。属性もほとんどの人が一つで、火の魔術師とか水の魔術師とか言われるみたい。王国初期の頃は王家と辺境伯家にも無詠唱は伝わってたんだけど、今ではフレアソード家にしか伝わってないらしい。


「今日こそはじいじから一本取ります!」

「いいぞ、その意気だ――こい!」


 左手は木剣をがっちり握って右手は柄を握って鞘から抜くように力を籠める。そこから身体強化マシマシで今できる最速の踏み込み!

 じいじの左を駆け抜ける勢いで足の動きに合わせて左手を開放!


キンーーーー


 あれ?変な音なったぞ?と振り向いたら前蹴りで吹っ飛ばされた…

 空中で態勢をたてなおして着地する。


「うむ、見事だ…」

「うん?どうしたのじいじ?」

「見ろ、木剣をぶった切られた」


 綺麗に真っ二つになった木剣をフリフリしてた。


「どうしたの、それ」

「こっちが聞きたいわ!なにをした?」


 言われて自分の木剣を見る。特になんともない。


「今できる最速の横なぎを繰り出しました」

「そうか…。とりあえず今日はもう終いにしよう。今やった踏み込みを忘れないように頭に叩き込んでおきなさい」

「わかりました」

「それと、今度から山狩りに連れて行ってやろう」

「はい!」


 さっきのはかっこよく居合斬りしたくてやってみたんだけどヤバかったな…。模擬戦で使う時は気を付けよう。


……………………


「カイト、私の傍を離れたらダメよ」

「わかりました」


 早速山狩りに連れてきてもらいました!今日は母上も一緒。手を繋ごうとしてきたのでちゃんと繋いだけど、もう10歳だしちょっと恥ずかしい…。


 ホントは魔物狩りとかしたくないけど、これはもう子爵家としては避けては通れないからね、ここにいる魔物がどの程度なのか見ておきたかったんだ。山狩りというけど、よくある殲滅戦をするわけじゃなく、ちょっと入ったところにあるここら辺の魔の森で一番高い小山に登るらしい。浅いところの魔物は冒険者なんかが狩ってくれるので、彼らの収入源は残しておかないとね。その小山なんだけど、強力な魔物が住み着くようで、たまにワイバーンとかも来るらしい。


 とかなんとか考えてるうちに小山の頂上に到着。道中ゴブリンとかイノシシの魔物とか出たけど、先行する騎士たちに討ち取られて何事もなかったっす。そしていましたワイバーン!それも2体!つがいかな?

 すぐにじいじと騎士達で取り囲んだんだけど、1体が飛びあがって空から火の玉飛ばしてくる、やっかいだね。


「カイトよく見てなさい」


 母上がそう言いながらもう1体と戦闘してる集団から離れた方角に手をかざす。そこに滑空攻撃してたワイバーンが差し掛かった時ドッ!とワイバーンの上で爆発が起きてワイバーンが地面に叩き落された!あれは炎魔法じゃなく爆裂魔法かな?すごいすごい


「母上すごい!」

「そうでしょう!抱き着いてもいいのよ?」

「あ、はい」


 そっと抱き着いて背中をぽんぽんして離れる。これも親孝行だ。だよね?


「ってもう2体とも首斬られてる…」


 さっきまで隣に居た父上もいつの間にか空から落とされたワイバーンの首のとこにいるし。母上が手をかざした時に落下地点を予測して準備してたのは見えてたけど、それにしても速いな…。まだ父上には剣術では敵わなそう。


 そしてダッシュで母上の隣に戻ってくる父上。うん、わかるよ。月に一度しか会えないからできるだけ隣に居たいんだね。


「カイト喜べ、ワイバーンの肉が食えるぞ!美味いぞ!お前の作ったバッグのおかげだ」

「それはよかったです。ソフィア母様達にもおみやげにワイバーン持って行ってくださいね」

「おう!本当にお前はよくできた子だなぁ」

「ほらほら、ギルとメイも待ってるし、アレやってさっさと帰るわよ」

「そうだな、よし」


 メイは5歳になった妹である。ギルは付いてきたけど参加は認められなかった。俺何もしてないし連れてきてもよかったんじゃ…。俺が行くと聞いて悔しそうな顔しててかわいそうだったよ?


「異常なしだな。カイトも見てみるか?」

「見たいです」

「よし、肩車してやる……ほらこれ」


 と言って渡されたのは遠見の魔道具。この山狩りのもう一つの目的は、小山の上からならかろうじて魔王城が見えるので異常ないかの確認である。100年前に猛威を振るった魔王も、突如現れた異世界人の勇者によって倒された。その時に上層階の壁は勇者があらかた吹き飛ばしたので丸見え状態なのである。そこに何かが住み着いていたら、知恵のあるものなら修復するだろうし、ただの強いだけのものでも高い所に居つくだろうということ。


 これって俺みたいに女神様に勧誘された人が勇者になったってことだよね?平和な時代でよかったなぁ。

 平和だよね?邪神とかいやよ

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