第7話

 カイトもうすぐ11歳になります。今は年度替わりのお休みで、こちらでは1月から新学期なので、今は年度末というやつである。


 この世界では正月休みなんてものがあるわけではないし、年度替わりで大半の人は普段より忙しくしてたりする。どういうことかというと、これまでは名前だけ校長だった母上が、新入生の受け入れ準備で多忙を極めた学校から要請があり学校に通いずめで今回の山狩りに不参加なのである。これ幸いとカイトは帰りの道中で騎士達にまざり最前列に陣取って魔物狩りに精を出していた。


「いやぁ、昨日のカレーライス美味しかったなぁ」


 ついにアリシアがカレーを完成させた!二人で泣きながら食べていたら食堂の従業員が「お店の前がすごいことに!」なんて言うのでこっそり見たら50人くらいの行列ができてたよ!カレーの匂いが外に漏れていて、それにつられて集まってきたらしい。しょうがないから鍋の残りで3口くらいで食べれるミニミニカレーライスを提供して解散してもらった。


 大好評だったので、香辛料をもっと仕入れてカレーライスを看板メニューにしよう!と盛り上がってしまい、アリシアパパは香辛料を大量に仕入れるため西の果ての隣国まで旅立っていった。片道3ヵ月はかかるらしい。ちなみに我が国の王都までは1か月。


「カレーライス?なんですかそれは」

「ミース商会の隣の食堂で開発した新メニューだよ。あと1年後くらいには食べれるようになるから楽しみにしてて」

「1年ですか、長いですね」

「しょうがないよ、西の王国まで香辛料仕入れにいったからね…」


 ん?なんか人っぽいのが魔物に追われてる気配があるな…。


「ちょっと魔物に人が襲われてるみたいだから助けに行くから父上に伝えておいて!」


 と言って全速力で樹の上を走ってるフリして飛ぶ!一緒に居た二人の騎士が騒いでたけど誰も付いてこれない。


「あれか……ってあれは!」


 熊の魔物に少女が追われてるんだけど……ケモミミである!頭の上の耳と尻尾以外は普通の人間と変わらない見た目で10歳くらいかな?って観察してる場合じゃない!


 熊の横っ腹に魔法で風をぶちあてて吹き飛ばし、落下地点にこちらも飛んでいって起き上がる前に首を落とす。


「ふぅ…大丈夫かい?」

「……あ、ありがとう」


 お、よかった言葉は通じるみたいだね。なんか草を握りしめてるけど薬草かなんかかな?


「こんなところまで一人できたの?」

「……にんげん見たら逃げろって言われてる。でもあなたエルフっぽい、エルフ?」


 んんん?俺ってばエルフだったの?人間だと思うけど…。って頭を傾げてたら逃げていった!


「おーい、どこいくんだい」

「……村に帰るの」

「え?村があるの?……危ないから送っていくよ!」

「……」


 ふむ。まぁ勝手に護衛していこう。村見たいし……って思ってたら集落っぽい気配がしてきたんだ。そして、すんごい魔力がすんごい速さで走って来てる!またこれかよ!今度は母上じゃないよ。


『……なんだおぬしは』


 そこに現れたのは体高3メートルはあろうかという輝く銀色の毛並みの狼だった。


「お?これはもしや定番の念話というやつですか」

『……うむ。村の娘が化け物みたいな魔力の奴に追われてると思ってきてみたら、おぬし人間か?』

「うーん、さっきも言われたけど、たぶん人間ですとしか言えないかな」

『……ふむ。神の祝福も受けてるようだし、ただの人間ではなさそうだな。しかもエルフの血も引いてるようだ』

「神の…祝福……あの女神様かぁ!ってエルフだったの?うちの父母は……」

『いや、先祖だろう。その金髪はエルフのものだ』

「え、そうだったの?じゃあ初代国王って…」

『リーネフ国であれば、あいつはエルフの族長の息子が人間との間に作った子だ』

「そ、そうなんですね。それであの、あなた様は…」


 なんか初代国王様のことあいつとか言ってるし言葉使い気を付けよう…。


『我は世界樹の東の森を守護するフェンリルである』


 あれ?なんか神獣っぽい肩書が…、膝付いたほうがいいかな。


「知らぬこととはいえ無礼をお許しください」

『よい。おぬし達のようなものにはそっと見守ってやってくれと言われている』

「ありがとうございます」

『うむ。村に帰る、せっかくだついてこい』


 そう言ってケモミミ少女の首根っこくわえて走り出すフェンリル様。はやっ!背丈くらいの草が生えてるから走りずらいんだけど!ケモミミ少女は母猫にくわえられた仔猫みたいに手足を畳んで丸くなってる。ずるい


 よし、また樹に登って枝から枝へ飛び移るフリをしよう。そしたらフェンリルさんがチラリとこっちを見た…バレてないよね?


『……ついたぞ。』

「む、村だ…こんなところに村があるなんて聞いたことないよ」

『そうか。フレアソードの今代当主は知ってるはずだが。5年くらい前からは不思議なバッグで食料を色々持ってきてくれるぞ』

「じいちゃんそんなことしてたんだ…」

『うむ。おぬしも匂いからしてフレアソード家のものなのだろう。ならばよいか』


 と言ったとたんフェンリルさんの後ろからミニサイズのフェンリルさんが4匹現れた!サイズはハスキー犬くらいかな?かわいい


『我の子らだ、おぬしが気になってしょうがないようだぞ』

「え――うわっぷ!」



 この後めちゃくちゃにもみくちゃにされました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る