第5話 Sideアリシア

――Sideアリシア


「アリシアそろそろ店じまいしましょ」

「はーい。……金額も間違ってないわね、よしと」


 カイと再会して記憶を取り戻してから算術が得意になった。それはもう長年商売人としてやってきた両親をしのぐほどに。おかげで今は会計係のようなことを任されてる。


 今までは前日の残金と今日の残金の差分で適当に合わせてたみたいなんだけど、金・銀・銅貨なので数えるのも大変で、お父さんが「付き合いがあるんだ」とか言ってこっそり抜いて出掛けていくので、いつもお母さん一人でプリプリしてた。これからは夜数えなくてもいいのでお母さんは喜んでた。お父さんも早く出掛けられるので喜んでた。


 カイは週に1回必ず会いに来てくれて、こないだはうちの系列店の食堂で新開発の親子丼を食べながら、カイとカールと呼び間違いそうだから今度から前世の幼稚園の時みたいにかーくんって呼ぶねって伝えた。そしたらかーくんも「あーちゃんって呼ぶね」って、きゃー!おぼえてたんだ…。


 学校が始まる一月前には制服その他もろもろが届いたんだけど、体操着とセットであるはずの帽子が無い!仕方ないのでかーくんの帽子作りました。ランニング終わったらその帽子はわたしのものよ。

 前世でも、公園に集まって野球したりしてるかーくんの帽子いつも奪ってかぶってたなぁ…。

 こんな形の帽子はこの世界じゃ見たことないからもしかしたら流行るかな?そしたらうちの店で作って売りましょう。


「いよいよ明日から学校、楽しみだなぁ……かーくんまた夜更かしして寝坊しないかな?起こしに行きたいけどどこに住んでるのか教えてくれないんだよね…。」


 前世ではかーくんの家の裏の畑はさんでお向いさんみたいな感じだったから、私の部屋からかーくんの部屋見えてたんだよ、内緒だけど。いつも夜更かししてゲームしてたの知ってるんだから。時々窓から顔を出して山のほうを見て鼻をくんくんしてるのも知ってるよ。わんこかなんかなの?

 ホントに見てると退屈しない人だよね。


 ………………………………


 カンカンカカン!


「あっ…」


 学校入学してから4年が経ちました。最近では剣術の授業で模擬戦をしてます。女子の中では私とリンっていう子が1.2番なんだけど、かーくんの相手できる男子がいないので私たち二人対かーくんで模擬戦してます。実は女子のほうが全体的に強い。このぐらいの年頃だと女子の方が成長早いのかな?

 今みたいに剣を飛ばされちゃった時には、抱き着き攻撃をしてかーくん成分を補充してから剣を拾いにいきます。たぶんかーくん避けれるけど、あえて受け止めてくれてる。好き


 そうしているともう一方のリンからすごい圧を感じる。この子も不思議な子で、最初の頃は普通だったけど、だんだん表情を変えなくなって最近ではほぼ無表情になった。勉強も魔法も剣術も全てにおいて私と競り合うライバル。でもかーくんのことだけは負けないわよ?


「よーし、今日はこれまでー!

 ちゃんと木剣片付けるんだぞ!おやつはいつものように机に置いてるから教室で食べるなり持ち帰るなり自由にしなさい」

「「「「「ありがとうございました」」」」」


 いつもおやつは持ち帰って店番しながら隙を見てたべるんだ。お客さんいなかったらかーくんも一緒に食べていってくれる。今日はどっちかな?


「あーちゃん帰るよー」


 もうすでに教室の出口に居た!昔から要領がいいのか動き出すのが異様に早かったんだよね。気づいたらいなくなってたりする。


「いまいくー!」


 かーくんはいつもお店まで送ってくれるんだ。朝も店の前の広場で待っててくれるし、前世と逆だね?朝、窓を叩くまで寝てたよね?


「かーくんいつもありがとね」

「ん?どうしたの急に」

「えへへ、なんでもなーい」

「うん、こっちこそありがとうだよ」

「どういたしましてだよ

 ……今度ね、カレーライス作ってみようと思うの」

「お!カレー食べたい!是非作って!」

「うん!お父さんに香辛料仕入れてもらってるから待っててね!」


 固形ルーを使ったのしか作ったことなかったけど、いちおうテレビの鉄骨奪取のカレー作りとか見たし味さえ近づければなんとかなるよね?


「ぁ……」

「うわぁ、行列できてるねぇ…」


 くぅっ、かーくんとおやつタイムできないわ…。

 やっぱりあの帽子バカ売れして、生産が追い付かないから今はサイズとデザイン聞いて予約を受けてるんだよね…。そしてかーくんの帽子は今も私がかぶってる。ちょっと大きい。でもそれがいい!


「よし!予約受けるの手伝っていくよ」

「ホント?ありがと!」


 そしてかーくんと並んで座って間に帽子のデザイン用サンプル置いて予約受付開始!


「帽子の予約はこちらでーす!2列に並んでくださーい」

「あら、アリシアちゃんのお婿さんかな?かわいい男の子捕まえたわねぇ」

「ちょっおばさん!捕まえただなんて……」

「あらあら、二人とも真っ赤になっちゃってかわいいわねぇ。おばちゃん達応援してあげるからね!」

「……ぁ……ありがとう……」


 かーくんのほうチラっと見たら、真っ赤になってるけど動揺してないフリして頑張って予約受けてた、かわいい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る