第3話

 カイト5歳になりました。

 先月、辺境伯領都のほうで周辺の寄子貴族も集めて5歳のお披露目会をやってきました。なんと、アデルバード・リーネフ国王陛下と王子王女もきていましたよ!フットワーク軽いのかな?ちなみに兄上の名前を命名したのは父の義兄にあたる陛下だったりする。

 そして我が町でも帰り道に馬車で軽いパレードをして笑顔で手を振ったんだけど、ありさはみつけられなかったよ…。


 あと、家庭教師がつきました。っても身内なんだけど。

 剣術はじいじ、魔法は母上、勉強は来年からかな。

 朝起きたら城壁の内側周りを軽くランニングして剣術の型をゆっくりやったらしっかりと柔軟体操。朝ごはんもしっかり食べて食後は魔力操作の練習しながら母上を待つ。母上の魔法講座が終わったら昼食もしっかり食べて30分ほど昼寝。起きたら木剣で素振りをしながらじいじの帰りを待つ。あとは夕食までじいじと稽古して1日終わりかな。


 早くありさ探しに行きたい!


「というわけで!」

「…? なにがというわけなんですか?」

「あ、ごめん。ちょっと考え事してた」


 この人は町に出る条件としてつけられた護衛の騎士3人のうちの一人。

 他にも2人、つかず離れずで付いてきてる。


「それで、あまり町の人に怖い思いさせたくないから、なるべく護衛とわからないように離れていてほしいんだ」

「わかりました。でも逃げたりしないでくださいね」

「それは約束するよ」


 人口約1万人規模のそれなりの大きさの町のメインストリートをスタスタと歩くカイト。その姿は町民が着てるような服を着て、魔道具を使って黒髪黒目になっていて、お貴族様にはとても見えない容姿だった。


「こりゃ探すの大変だぞ、今日みつけられるかな――――」


 その時大きめな商会から出ていくお客さんに頭を下げている少女が目に入った。

 金に近い明るい茶髪茶眼で、店を手伝うためなのか後ろで一つ結びにした可愛らしい少女。

 カイトは周囲の喧騒も忘れて目を奪われた。


「……みつけた……」


 あの笑い方と身のこなしは俺の幼馴染だ、間違いない!

 目を離さずに向かっていくと、向こうもじーっとこっちを見てる。泣きそう

 

「こんにちは」

「こんにちは?」


 っと小首をかしげる少女。あれ?こんにちは文化ない?


「えっと、ぼくはカ……カールっていいます」

「そう、私はミース商会のアリシアです」

「この町のことよくわからないんだけど教えてほしいんだ、よろしくね」


 といって手をさしだす。もう泣きそう


「はい、よろし――っ!」


 急に記憶が流れ込んだせいか倒れそうになるので抱きしめる。

 もう泣いていいよね?っていうか我慢できてなかった…。


「カイなの……」

「そうだよ、ありさ……会いたかった」

「――!!」


 5歳児が小さい腕をまわしてひしと抱き合う微笑ましい姿が周囲の目に留まる。

 お互いに耳元で喋ってたから誰にも聞かれてないと思うけど、店の中からアリシアのお母さんっぽい人が怪訝そうな顔で出てきた。あれこれヤバイ?


「アリシア?どうしたの?」

「あっ、お母さん。この子はカ――」

「カールっていいます!よろしくお願いします」

「カールくんね。見ない顔だけどお父さんお母さんと旅行でもしてるのかな?」

「最近引っ越して来まして、今日初めて町を歩いたんです」

「そうなのね。うん、わかった。アリシアと仲良くしてあげてね」

「はい!絶対に幸せにします!」

「「え!?」」

「あ、ち、ちがくて……友達いないので仲良くしてほしい…です…」

「もう!もうもう!」


 真っ赤な顔で俺の肩をぽこぽこ叩くアリシア。かわいい

 ごめん、口がすべったよ…。


「ふーん……アリシアちょっと休憩していいわよ、そこら辺案内してあげたら?そこの真っ赤な顔した可愛い男の子を」


 ぎゃー!俺も真っ赤なのかー!恥ずかしい


「お母さんありがとう!いこ、か……ーる」


 その後中央広場の周りを案内された。ここの屋台の焼き鳥は美味しいよとか、ここの食堂はミース商会の系列店でなんと!お米が食べられるそう!そのうちオムライス伝授するから待っててねとか。オムライス食べたい!

 そして中央のベンチに2人で座って、アリシアが遮音の結界を発動した。


「よし!初めてだけどうまくできたみたい」

「おお!結界便利だね」

「うん!魔物もいる世界だし、自分の身は守れそうでよかったかな。

 そんなことよりカイ!ちゃんとみつけてくれてありがとう」

「どういたしまして!女神様に聞いた時は心配だったけど、なんか一目でわかったよ」

「さすが私の幼馴染ね!これからも会えるの?」

「この世界で生きていくためにある程度力付けないとだから、剣と魔法を師匠に習ってるんだよね。だから週に1回くらいしか抜けてこれないんだ」

「そうなんだ。私はいつもお店の手伝いしてるけど、いつでも抜け出せるよ」

「わかった。帰ったら師匠と相談してみるね」

「うん。……そういえばさっき……」

「俺、今世では覚悟決めたから!絶対アリシアを守って幸せにするから!」

「わかった……」(前世でも早く告白してくれればよかったのに…)

「うん?なんて?」

「なんでもないですよーだ!……そろそろ怪しまれそうだから結界解除するね」

「うん?うん、わかったよ」

「あ…お店忙しそうだからそろそろ戻るね?」

「そうだね。小さい看板娘さん頑張ってね」

「この町一番って評判なんだから!……せっかくだから今度私にも魔法教えてね」

「わかったよ。じゃあね」

「うん!またね!」

「ぁ……」


 アリシアはほっぺにキスをして走り去っていったんだ…

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