第16話
「ベッド使っちゃってください! 私は床に寝ますから」
「いやいいっていいって! 私が床に寝るよ!」
爛々と目を輝かせて完璧なベッドメイクを終わらせたメラちゃんに大きく手を振ってベッドを辞し、何とか床寝を勝ち取る。
なぜか不満そうだったメラちゃんだったけど、「なんか嬉しいです。頼ってもらえて」と、私が人を食すモンスターならば彼女の頭からカプリと食べてしまいたくなるようなことを言ってくれる。
彼女のお陰で火事のことなんてすっかり忘れてしまいそうだ。
「あ、咲苗さん、先にお風呂入ってください」
「そんな、悪いよ。全然私のことなんて蔑ろにしてもらっていいから。何なら玄関の三和土から上がらないでもいいくらいだし。犬みたいな扱いでほんと構わないから」
「そんなことできません」と頬を膨らませる人の姿をした天使を抱きしめてしまう前に、「それじゃお言葉に甘えて」と、一番風呂を頂くことにする。
「……はぁ」
近所のスーパーで買ったとりあえずの下着を持って脱衣所へ入り、一息吐く。
「ほんと、いい子だなぁ」
セルライトが隠し切れない身体を見下ろしながらも、パパパと服を脱ぎ捨て、身体をいつもの倍以上時間をかけて洗ってからお湯の張られた浴槽に浸かる。
「やばい……気持ちよくて寝そう……」
目を閉じながら、睡魔と戦う私は、彼女に連絡した数時間前を回想する。
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