第20話 魑魅魍魎

田中は京都の静かな街並みを散策しながら、小比類巻かほるの曲をイヤフォンで流していた。メロディーは心に響くものの、彼はその歌唱力に首を傾げる。


「なんでこんなに声がこもってるんだ?」と、彼は思わずつぶやく。歌の情感や力強さに欠ける部分が気になり、田中は思わず微笑んでしまった。


 それでも、京都の美しい風景を背景に、彼は小比類巻の音楽に耳を傾けながら、ゆっくりと歩みを進める。彼にとっては、音楽よりも景色の方が心を満たしていることに気づく。


 京都で開戦した26日、西軍は斯波義廉(管領)配下の朝倉・甲斐氏の兵が山名宗全邸南側の細川勝久邸を攻めて細川勢と激戦を展開し、東から援軍に来た京極持清を返り討ちにした。東軍の赤松政則は南下して正親町を通り、猪熊に攻め上って斯波勢を退け、細川勝久はこの隙を見て東の細川成之邸に逃げ込んだ。西軍は勝久邸を焼き払い、さらに成之邸に攻め寄せ雲の寺、百万遍の仏殿・革堂にも火を放ち成之邸を攻撃したが東軍の抵抗で勝敗は決せず、翌日両軍は引き上げた。この合戦による火災のため、京都は北の船岡山から南の二条通りまでの一帯が延焼した。将軍義政は28日に両軍に和睦を命じ、勝元の行動を非難しながら、義就には河内下向を指示し、また伊勢貞親に軍を率いて上洛させるなど乱の収束と復権に向けた動きを取っていた。


 ところが6月3日に勝元の要請によって将軍の牙旗が東軍に下され、足利義視が総大将に推戴されたことで、戦乱は拡大する方向に向かっていく。東軍は軍事行動を再開し、6月8日には赤松政則が一条大宮で山名教之を破った。さらに将軍義政が降伏を勧告すると斯波義廉ら西軍諸将は動揺して自邸に引きこもったが、東軍は義廉邸も攻撃した。京都は再び兵火に巻き込まれ、南北は二条から御霊の辻まで、東西は大舎人町から室町までが炎上した。義廉・六角高頼・土岐成頼はいったんは降伏の意向を示したが、東軍に激しく抗戦する朝倉孝景(斯波氏宿老)の首級を条件とされたため断念した。


 **応仁の乱と妖怪の影**


 1467年、京都。開戦の日、26日が訪れると、戦の響きが街を揺らす。西軍の斯波義廉配下、朝倉と甲斐の兵が、細川勝久邸を攻め立て、激しい戦闘が繰り広げられた。東軍の赤松政則は、正親町を南下し、猪熊へ攻め上る。斯波勢を退けた彼は、勝久の逃亡を許し、京都の戦局はますます混沌としていく。


しかし、この戦火の裏には、見えない存在が潜んでいた。夜の帳が下りる頃、京都の街に妖怪たちが現れる。彼らは戦の混乱に乗じて、人々の恐れを利用し、自らの力を増していく。


その日、田中は河原町を歩いていた。ふと耳にしたのは、妖怪の囁き。人々の悲鳴や、刃が交わる音の合間に、彼は何か不気味なものを感じ取った。


「これは一体…?」田中は思わず立ち止まった。その瞬間、目の前に現れたのは、化け猫のような妖怪だった。目は光り、黒い毛皮が闇に溶け込む。


「人間、ここから立ち去れ!」と、妖怪は低い声で告げる。「戦の影に飲まれてはならぬ。」


田中は、一瞬躊躇するが、戦乱の中でどれだけの者がこの妖怪に導かれているのか、理解する。彼は足を進め、妖怪と目を合わせた。「お前たちは、何を望む?」


「我々は、戦の混乱を楽しむ者たちだ。」妖怪は笑みを浮かべ、「だが、我々はこの街を守ることもできる。人間の争いが終わるまで、我々の力を借りることができる。」


戦の混沌が続く中、田中は妖怪の提案に心が揺れた。彼は、妖怪たちの力を借りて、戦乱の幕を引く方法を考え始めた。


一方、勝久邸が焼かれ、戦局が拡大する中、将軍義政は和睦を命じる。しかし、妖怪の出現が人々の心に恐怖をもたらし、さらなる混乱を招く。妖怪たちは、戦いの終息を望む田中の行動に注目し、彼の前に現れる。


「我々は、この戦を終わらせる手助けをしよう。」妖怪たちは田中に告げた。「だが、代償を求めることを忘れないでくれ。」


田中は彼らの言葉に心を決め、戦の平和を取り戻すため、妖怪と共に行動することを決意した。彼は、京都の人々に妖怪たちの存在を伝え、共に戦乱の終息を目指すことにした。


やがて、戦局は変化し、妖怪たちの力を借りた田中の言葉が人々に届く。戦いは徐々に収束し、京都には再び平和が訪れようとしていた。しかし、妖怪たちはその背後で微笑みながら、彼らの力が人間の争いを引き起こす要因となることを待ち続けていた。


**結末に向けて**

田中は、戦の終息を見届けるが、その背後にある妖怪たちの存在に気づき、これからの京都の未来に思いを馳せる。人間と妖怪が共存する新たな時代の到来を感じながら、田中は京都を後にするのだった。

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