第35話

蕎麦屋のおばさんは、二階の四畳半の部屋に私を案内した。


「押し入れに布団はいってるよ」



そして、小さなバック一つの身なりをみて、



「なんか事情ありそうだね…」



不憫そうに呟いた。







……信用出来る人だろうか?






「NATSUさんの親戚の方ですか?」



バックを置いて正座した。


「アカの他人だけど、地元じゃ母親代わりみたいなもんよー」



おばちゃんはアハハと気さくに笑い、続けて、




「なっちゃんのお母さんは、18のとき亡くなったからねぇ…」



と表情を曇らせた。




……そうだったんだ。




「オヤジさんは生きちゃいるけど、昼間っから酔いつぶれてるような男だから、なっちゃんも地元に来ても実家には寄り付かないんだよ」







…NATSUも寂しい人なんだなぁ。


だから私をほっとけなかった?





「さて、次はあんたが話す番だよ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る