第36話

「お嬢さん、家出かい? いくつなの?どこからきたの?」




おばちゃんは、私と同じように正座して、優しく聞いてきた。




「愛といいます。18歳で、F市に住んでました」





「近い家出だねー、親とケンカしたの?」




「母親が一週間前になくなって、私は親戚の家にお世話になってました」





改めて言葉にすると、孤独を感じる。

今田さんに借りたスカートをギュッと掴んだ。




これからの孤独な人生から、まるで逃げてきてしまったような状況…。





「親戚の家には帰れないのかい?」




おばちゃんは私を優しく見つめる。




「帰れないです……」




その、気の毒そうな視線から逃れるように、バックから財布を取り出し、


千円札と小銭を、おばさんに広げてみせた。

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