第13話 盗賊の捜索
「
「ふむ。その可能性も否めないな」
部下の
ここは華天国の光族の都から東にある隣国の国境付近。
10日程前に「国境沿いで盗賊の被害があった」と光族の民から連絡を受けた光族の族長の命令で光主は側近の明山と一緒に兵士を連れて盗賊退治にやって来たのだが捜索しても盗賊が見つからないでいた。
光主は光族の族長の長男で22歳。今回のように族長の代わりに仕事をすることも多い。
黄金にも見える金髪と金の瞳を持ち、整った顔立ちに均整の取れた程よい筋肉質の身体の光主はその身分もあって女性にモテる。
しかし現在光主には恋人がいない。好きな女性もいない。
自分が女性に人気があることは自覚しているが今まで自分が好ましいと思った女性に出会えたことがない。
光主の理想の女性像は外見の美しさも大事だがそれよりも内面の美しい女性だ。
誰に対しても優しくでき信念を持ち真の強さを持つような女性。
それでいて光主のことも外見ではなく内面を好きになってくれる女性がいれば光主もその女性と恋人になりたいと思う。
しかし現実はそう甘くない。
自分の周りに寄ってくる女性は光主の外見や族長の長男という地位に惹かれてくる女性ばかり。
最近ではそのことに辟易して女性との距離を置いてしまっている状態だ。
「そろそろ日も暮れますし砦に戻りませんか?」
明山の言う通りに辺りは既に夕暮れになっている。
あと少しで太陽は完全に沈んで闇に包まれるだろう。
盗賊が隣国に逃げた可能性は高いがまだどこかに潜んでいることも考えられる。
夜の捜索は危険だ。
「そうだな。一度、砦に戻るか。このまま盗賊の捜索を続けるかもう一度検討し直そう」
現在、光主たちは国境沿いにある光族の砦に滞在している。
数日間探しても見つからない盗賊をまだ探す必要があるのか考え直す必要がありそうだ。
光主だって暇ではないのだ。
今回は自分の父親の族長の命令だったからここまでやって来たが族長の長男が光の都を長期不在にする訳にもいかない。
何もなければ自分は父の後継者として族長を継ぐ可能性は高い。
族長は長男が継がなければならない決まりはないが二人の弟のことを思うと自分が次の族長に指名されるだろうことは嫌でも自覚してしまう。
(
自分の馬を砦の方向に歩かせながら脳裏に浮かぶ二人の弟の顔を思い浮かべると思わず光主は溜息を漏らしてしまう。
そんな様子に気付いた明山が自分の馬を光主の隣りに並ばせて声をかけてきた。
「どうしたんですか? 光主様。溜息なんてついて」
「いや、俺の弟たちがもう少ししっかりしてれば俺も族長になる以外の道もあったかなと思ってな」
すると明山は僅かに苦笑する。
「仕方ないですよ。光延様や光拓様に比べたら光主様の方が霊力は強いし人望もある。それでいて族長の長男ですから光主様が族長になられるのが自然な流れでしょう」
「俺も族長になることが嫌ではないがそれ以外の人生があったら自分はどうしたかなと思う時があるのさ」
幼い頃から族長の息子として育った光主は当たり前のようにたくさんの勉学を覚えさせられ剣術などの厳しい鍛練もさせられた。
全ては光族の民のためと言われればどんなに辛いことでも「嫌だ」と言えない状態だったのだ。
もし自分が族長の息子じゃなかったら。
もし自分が霊力の強い人間じゃなかったら。
そんな「もし」を考えてしまう自分がいることに光主は気付いていた。
すると明山は何かを思い出したようだ。
「もし光主様が族長以外の道をというならもうひとつ道はあるじゃないですか」
「なんだと?」
「光の王配になる人生ですよ。確か光主様は今回の王配候補者たちの指名を族長から受けていましたよね?」
その途端、光主の顔が心底嫌そうな表情に変わった。
確かに光主は族長から王配候補者の指名を受けている。
だがそのことは光主にとって喜ばしいことでも何でもないのだ。
「王配候補者の指名は受けているが俺は王配になる気はない」
「なぜですか? 王配はなりたくてもなれない存在ですよ。高い霊力を持ち人の上に立つ人格者でないとなれないと聞いています。光主様はその二つを持ち合わせているから適任だと思いますが」
「もうひとつの王配の役目があるだろうが」
「もうひとつ? ああ、女王の夫の一人になるってことですか?」
「俺は自分の好きな女と結婚したいんだ。義務でするような結婚はしたくない」
相思相愛の者と結婚したい。
それが光主の本音だ。
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