クルーザー

  苦しいので、もう寝ようか。こんなにもぐちゃぐちゃとした気分を自分で認めるのは、初めてだ。何に対しても、自分で認めてしまうと苦しくなる。せめて頭の中、口先だけでは強気でいたい。何も気にしていない、悩んでないように感じたい。他人にそう見られたいという顕示欲だと思っていたが、どうやら違うらしい。セルフ洗脳なのである。全ての生活に対してそうだ。自分が今、自分以外の何かによってぐちゃぐちゃな気分になっている、ということを認めたくない。自分以外のなにかに気分を左右されること、また、感情の起伏自体にも、完全なるアレルギーを持っている。

 とことん突き詰めてしまう方だ。一度考え始めると、たくさんの引き出しから、なかったはずの引き出しから、ネガティブを取り出してしまうのだ。しかし今回は、ネガティブというか、なんというか、言い表せられない複雑な、それこそ人生で一番のぐちゃぐちゃな気分なのだ。

 そのなかには嬉しさ、喜びが多く含まれている。おおよそ、99%含有されている。残りの1%は悲しみかもしれない。絵の具を混ぜ合わせたことがあるだろうか。明る色に、たとえば黄色に、それより明度が低い青を混ぜて緑を作ろうとする。筆先にちょこんとつける程度であっという間に緑になる。つまりは、そういうことなのだ。このたった1%の悲しみで、あっという間に緑になるのだ。

 常に自分の気分が良くも悪くもぶれることを恐れている。仕事、生活に支障をきたすほどに、考えてしまう愚かさを自認しているから。しかし今回ばかりは、なぜか認めてしまった。認め、自分の中で持ち続けようという、無意識からくる意志を感じる。今のこのぐちゃぐちゃとした気分自体は、たしかに不快だ。しかし、そのぐちゃぐちゃが来たもとが、99%の嬉しさ、喜びなので、持ち続けようとしているのか。なんとなく、この気持ちはどこかに保存しておいたほうが良い気がする。というわけで、言葉に置き換えてみたのだ。こんな日は、文字と音に触れるしかない。

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