エピローグ


 帰り支度をする彼を、私は黙って見つめていた。



 帰っていく彼を見送る私は、何故か一粒の涙も零さなかった。



 目の前で玄関扉が閉まる間際、



「人生楽しめよ」


 彼はそう笑った。



 彼がいなくなったその部屋で、キッチンに行き残った珈琲を口にする。



 ブラックコーヒーのその苦味に、ようやく少しだけ涙が出た。





 ブラックコーヒー 完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る