第21話それぞれの試練
アイリスたちは、重厚な扉を開き、試練の塔の一階に足を踏み入れた。そこには一人の魔術士が立っており、「ようこそ試練の塔へ」と歓迎の言葉を口にした。しかし、その瞬間、ヴィスティーが「話は飛ばして大丈夫よ。どうも本物ではないみたいだから〜」と軽い調子で言った。
アイリスは驚き、「いいんですか?」と尋ねると、すぐに「フレイムテンペスト!」と叫び、炎の渦が魔術士を襲った。魔術士は一瞬で炎に包まれ、あっさりと消滅した。「ね?私たち、何周も来てるから〜」とヴィスティーは笑いながら言った。
ララは少し不安そうに「でも、私たちだけだったら倒さなくても通れましたよね?」と尋ねると、ヴィスティーは「人数が増えたからね〜」と軽く答えた。「ちなみに次は水タイプだから、よろしくね〜」とヴィスティーが笑顔で続けると、アイリスは「分かりました」と快く答え、階段を登った。
二階に着くと、また同じ魔術士が立っており、「二階によく辿り着いた」と言いかけたところで、ヴィスティーが「やっちゃって⭐︎」と促した。アイリスは慌てて「はいっ!」と言い、「サンダーブラスト!」と雷の光線を放ち、魔術士を消し去った。
「じゃあ、行きましょう〜」とヴィスティーが言いながら進むと、アイリスは「これってどういう試練ですか?なんかあっさりしすぎてるような…」と疑問を口にした。ララは「大丈夫、一定以上のダメージが与えられたら突破できる試練だと思うよ。あと、次の三階は炎だからね。頑張って〜」と励ました。
アイリスは「もしかして、炎タイプにも雷で戦ったんですか?」と尋ねると、ヴィスティーは「そうよ。結構楽でしたよ〜」と笑顔で答えた。「すごいですね」とアイリスも笑い、階段を登り、三階に向かった。
三階に到着すると、魔術士が「よくここまで…」と言いかけた瞬間、「アクアテンペスト!」と水の渦を放ち、アイリスがその言葉を遮るように攻撃を仕掛けた。魔術士は一瞬で消し飛ばされ、ララが「ついに話すら聞かなくなったね」と笑いながら言った。「次は風タイプだからね」とララは続け、三人は次の階へと進んでいった。アイリスは階段を登りながら、すでに魔力を高めていた。次の階層に到達し、魔術士が現れると同時に、彼女は素早く「ブリザードテンペスト!」と叫び、冷たい吹雪が相手を包み込んだ。瞬く間に魔術士は凍りつき、粉々に消滅した。
「さすがに早すぎたね」とララが苦笑いすると、ヴィスティーは「ふふふ、一度来た所は省略したらいいのよ〜」と楽しそうに笑った。
「次はいよいよ土タイプよ〜。私でも無理でした〜」とヴィスティーが笑顔で言うと、アイリスは「土だったら風かな〜」と考え、一瞬ガルムのことを思い出した。「ガルムくんも、ちゃんと修行してるかな?」と心の中で呟きながら、階段を駆け上がった。一方、ガルムは土龍の住む場所に到着していた。里から少し離れた森の中を進むと、開けた空間に出た。そこには大きな土龍が眠っていた。アエリオンはその姿を見て「え!物語とかでよく見る龍じゃん、茶色いけど…」と驚いた。スレイアも「人の姿じゃないのか?確かに人型の龍から血をもらうのは抵抗あるけど、まさか本当の龍族だったなんて…」と呟いた。
しかし、土龍は一向に起きる気配がない。ガルムは近づいて「おーい、敵が来たぞ〜」と声をかけたが反応はなかった。少しイラッとしたガルムは軽く蹴りを入れるが、土龍は「ぐーぐー」と眠ったままだった。「もしかして、こいつを起こすのが試練なのか?」とアエリオンが言うと、「じゃあ、相手は土だし風で吹き飛ばしたらさすがに起きるだろ?」とスレイアが提案した。
アエリオンは「じゃあ、新技でも試すか」と笑い、紙に描いた新技のイメージを取り出した。しかしそれは、ただのぐちゃぐちゃに渦を描いた落書きのようだった。「それ、ラクガキじゃなかったのか?」とスレイアが笑うと、アエリオンは「笑うなよ、ちゃんと大技だから」と返し、体に風をまとわせた。以前のヴァイスのように、周囲には強い風が吹き荒れ、アエリオンとスレイアも驚く。「やっぱり成長してるな」とスレイアは嬉しそうに言った。
その瞬間、風の荒れ狂う音に反応して、土龍が目を覚ました。「なんだ…今まで気配すらちっぽけだったのが急に強大になった」と言いながら立ち上がろうとする土龍。ガルムは「もう遅いぜ」と「ストームピラー!」と叫び、土龍の体の下から巨大な竜巻を発生させた。土龍は一気に上空へ吹き飛ばされた。
ガルムも自ら飛び上がり、「龍なんだっけ?もういいやドラゴン拳!」と叫びながら左手で土龍の顔を思い切り殴りつけ、地面に叩きつけた。土龍は目を回し、「合格だ」と言いながら自らの爪で腕を切り、血を差し出した。アエリオンはその血を飲むのをためらったが、スレイアと土龍に「早く飲め」と言われ、渋々それを飲んだ。「決して美味しいものじゃないな…これが一番の試練だ」とガルムは苦笑いし、土龍にお礼を言った。
土龍は「久しぶりに試練を受ける奴に会えた。次は風龍だな。頑張れよ。俺はもう一眠りする」と言いながら、「たまにオロチの気配を感じることがあるから用心しろよ」と忠告し、再び眠りについた。
アエリオンとスレイアは「オロチって何だろうな。強いのはわかるけど、一切暴れてる様子もないし、目的がわからないのが一番怖い」と言いながら、次の場所に向かって歩き始めた。
「スレイア、正直さ…土龍全然本気出してなかったよな」とアエリオンが呟くと、スレイアは「そうか?多分、もともと戦うのが好きじゃないタイプなんだろ。確かにずっと寝てたしな」と返す。「でも、本気になったらどうなるかわからない…」とアエリオンが言うと、「何弱気になってるんだ。俺たち、成長してるって。だって、目を回してたじゃん」とスレイアが笑いながら励ました。
その時、「やっと追いついた〜!」という声が聞こえて、アイリスかと思って振り向くと、黒髪を後ろで束ね、龍族の衣装を身に着けた可愛らしい少女が駆け寄ってきた。「私は龍那。龍妃様に言われて案内係として来ました。まさかもう土龍を倒してるとは思いませんでしたが、竜巻が見えたので急いで駆けつけました」
「ガイドしてくれるの?ありがとう、俺はガルム、よろしく」とガルムが言うと、「あ〜ガルムくんってことでいいのね。まあその方が楽でいいか。どっちに話していいかわからないし」と龍那は笑った。
アエリオンとスレイアは「2人ってなんだ?」と思っていると、龍那が「龍族は気配で相手の状況がわかるから、あなたの中に2人いるのはわかるのよ。それと、得体の知れない者も見えるけど、多分大丈夫かな?」と答えた。アエリオンは「フェニックスのことか?」と考えた。
「とりあえず行きますか。次は風龍ですよ」と龍那が先に歩き始め、ガルムたちはその後を追った。龍那に草原に風龍がいると言われ案内されるが、姿が見えないが、アエリオンが草原の風を感じながら辺りを見渡す。青い空と緑の草原が広がる中、風の流れに集中して風龍の気配を探った。
「確かに、どこを見ても草原ばかりだな。けど、この風…ただの風じゃない気がする。風龍の力がこの草原全体を覆ってるんじゃないか?」
アエリオンは立ち止まり、風の方向を見つめながら考え込んだ。スレイアが内部で声をかける。「アエリオン、もしかして風龍は草の中に潜んでいるんじゃないか?周囲の風の流れが何かを隠しているかもしれない。」
アエリオンがうなずき、草原の風の流れを注意深く読み取ろうとすると、一瞬だけ風が強く吹き、彼の周囲の草がなびいた。「見つけたぞ、あそこだ!」
アエリオンはその方向に向かって走り出す。すると、突然足元の草が大きく渦巻き、風が強まった。目の前に風龍が姿を現し、草原の風を操りながら、ガルムに対して警戒するように身を低くしている。
「ようやく出てきたな。俺野中試練の相手はお前だ!」アエリオンが声を上げ、ガルムが身構える。風龍が口から竜巻を吹き出し、ガルムに向かって攻撃を仕掛けてきた。アエリオンが風龍と対峙する中、風龍は風の刃のような突風を操り、ガルムに攻撃を仕掛けてきた。アエリオンがその攻撃を避けながら、スレイアに声をかける。
「スレイア、交代だ!こいつ、ただの風じゃない。お前の水で対抗するしかなさそうだ。」
アエリオンがその場から飛び退き、スレイアに交代する。スレイアは体に流れる水の魔力を呼び起こし、風龍に向けて鋭い視線を向けた。
「なるほど、風を巧みに使う相手か。だが、水も風に負けるわけにはいかない。」
スレイアが集中すると、周囲の草原の空気が一瞬で冷たくなり、ガルムの体から水の魔力が解き放たれた。「アクアヴォルテックス!」スレイアが叫び、巨大な水の渦がガルムの手から風龍に向かって放たれた。
風龍は鋭く風の刃を放ち、渦を切り裂こうとするが、スレイアの水の力が風に負けずに押し返す。
「さすが風龍だな…だが、俺の水はお前の風にも負けない!」スレイアは再び魔力を込め、風龍の動きを封じるように渦を強化していく。
風龍が身を低くし、風を巻き上げながら反撃の準備をしている。風と水がぶつかり合い、草原全体に激しい勢いが広がった。スレイアが風龍に向かい、ガルムの体内で魔力を集中させる。両手を前に突き出し、水の力を一気に解き放った。「アクアスパイラル!」
渦巻く水の刃が高速で回転し、風龍に向かって一直線に飛び出した。風龍はその巨大な渦を見て風の刃を繰り出し、迎撃しようとするが、スレイアの水の力はそれを凌駕していく。
「これで終わりだ!」とスレイアが叫び、アクアスパイラルがさらに勢いを増して風龍を包み込む。水の渦が風龍の体に触れた瞬間、激しい衝撃音と共に風龍が空中に投げ出された。
スレイアの渦は風龍の翼を切り裂き、そのまま風龍を空中で押し込んでいく。水と風が激しくぶつかり合う中、アクアスパイラルの威力が一気に炸裂し、風龍の体を吹き飛ばした。
「やったか…」スレイアが息を整えながら呟くと、風龍が草原に落ち、しばらくしてから動かなくなった。
「合格だ…強いな、お前は…」と、風龍は微笑みながらスレイアに話しかけ、自らの体を傷つけて血を差し出した。
スレイアはその血を受け取り、これでさらなる力を得られることを確信した。
「ありがとう、風龍。またいつか戦おう。」スレイアが礼を言うと、風龍は笑顔で頷き、草原の中に消えていった。「やっぱり手加減してるな…」とアエリオンが言うと「多分試練だからだろう」とスレイアは返した。「龍那、次はどこだ?」アエリオンが問いかける。「えーっと、氷龍かな? かなり厄介な相手ですけど、大丈夫ですか?」と龍那が心配そうに言う。
「大丈夫も何も、行かなきゃ試練にならないだろ?」アエリオンは迷いなく答えた。スレイアが、「氷龍なら湖にいるはずだな」と推測する。「案内します!」と、龍那は前を走り始めるが、その軽い態度にアエリオンは「ガイドの割に適当だな…」と少し苛立ちを覚えながら後を追った。
草原を北に進むと、凍りついた大きな湖が現れた。遠く、湖の中心には巨大な氷龍が待ち構えている。冷気が周囲に広がり、空気が一層冷たくなる。
「スレイア、フェニックス以外に決定打がないが、フェニックスは使えない。ここは同時攻撃で倒そう」とアエリオンが提案する。「同時攻撃か…いけるか?」とスレイアも興味津々に同意する。
「俺の新技、暴風で氷龍を囲む。その瞬間にお前が貫通技で決めろ」とアエリオンが自信を見せる。スレイアは少し不安そうに、「生半可な攻撃じゃ凍らされるだけだろうけど、試してみよう」と言った。
アエリオンは静かに集中する。氷龍は鋭い目で彼らを見下ろし、「どこからでもかかってこい。すべてを凍らせてやる」と威圧的に言い放つ。
アエリオンは一瞬の隙を見て「ソニックブレイク!」と氷龍に攻撃を仕掛けるが、氷に包まれて砕けてしまった。「やっぱり生半可な技じゃ駄目か…」と苦笑しながら、全身に風を纏う。「ウィンドプリズン!」と叫び、氷龍を暴風で包み込む。
「うん?風が凍らない…むしろこっちが有利か?」とアエリオンは驚きつつも、風で氷龍を少しずつ消耗させていく。氷龍は苛立ち、「なかなかやるな。だが決め手に欠ける」と反撃しようとした。
その時、「それはどうかな?」とアエリオンが素早くスレイアに交代し、全力で魔力を高める。「アクアスパイラル!」と叫び、水の力を込めた貫通技が風の中を突き抜け、氷龍に直撃する。氷龍は「ぐあっ!」と声をあげて倒れ込み、力尽きた。
「合格だ。おめでとう…」氷龍は自らの爪を裂き、血を差し出す。アエリオンは近づき、躊躇いながらも「このまま僕が飲んでもいいか?」とスレイアが尋ねる。
「体は一緒だから、どっちが飲んでも同じだろ?」アエリオンが答える。しかしスレイアは「いや、これは僕自身の決意なんだ」と言って、血を飲み干す。すると手のひらに氷が現れ、「え? スレイア、氷を出せるのか?」とアエリオンが驚く。
「氷龍の血を飲んだから出せるようになったんだよ。これも試練の一環だろう」とスレイアが笑う。アエリオンは興奮して、「じゃあ、火龍の血を飲めば俺も炎が使えるようになるかも?」とウキウキしながら次の試練に向かう気持ちを抑えきれない様子だった。
二人は走り出し、龍那も後を追う。「次は火龍か…楽しみだ」と気合いを入れながら進むが、龍那は心の中で(しかし、氷龍まで倒すとは、彼らは一体何者なのだろう…)と疑問を抱いていた。
一方、龍の里では、龍妃が龍菜に詰め寄っていた。「ちょっと龍菜さん、こんなところで何してるの? ガルムの案内はどうなってるの?」龍菜は焦り、「え? どこ探してもいないんです!土龍は倒してるし、風龍も倒されたあとです」と言い訳をする。
「それはおかしいですね。あまりにも早すぎますし、移動も的確すぎる。彼に協力者がいるのでは?」と龍妃は鋭い推測を口にした。
「それなら、氷龍のところに先回りしましょうか?」と龍菜が提案するが、龍妃は「いいえ、私が直接確認します。次は火龍のもとへ向かいます。龍菜さんも一緒に来てください」と命じ、二人で急ぎ火龍のもとへと向かう。
アエリオンは気合いを入れ、「よし、火龍を倒しに行くぞ」と言って、勇ましく火龍の元に向かって走り出した。龍那が一緒に行動しているが、彼女が何者なのか、真の姿が次回明らかにされるだろう…。
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