第22話それぞれの成長
ガルムたちは山のふもとにたどり着いた。目の前には巨大な岩場が広がっており、その中央で赤く燃え盛る炎の気配が渦巻いていた。
「ここだ、火龍はこの近くにいる」アエリオンがその鋭い目で周囲を見回した。
スレイアは息を整え、「火龍は相当な手強い相手だ。だが、これも試練だ。乗り越えなければ進めない」と強く言い放った。
突然、地面が揺れ始め、岩場がひび割れ、炎が一気に噴き出す。ガルムたちはその場に踏みとどまり、前方にそびえ立つ火龍を目にした。火龍は巨大な体をゆっくりと持ち上げ、紅蓮の瞳で彼らを睨みつけていた。
「やっと来たか、人間ごときがこの地に挑むとはな。覚悟はできているか?」火龍が低く、威圧的な声で言い放つ。
ガルムはその挑発に微動だにせず、「俺はこの試練を乗り越えるためにここにいる。火龍、お前を倒して次に進む」と力強く返す「まずは俺が風で防御を固める。それからスレイアが攻撃を仕掛ける。タイミングを合わせろ」と指示を出す。
アエリオンは風をまとい、戦いの準備が整った。火龍は大きく口を開け、炎を放とうとするその瞬間、「ストームクラッシュ!」と叫び、ガルムが竜巻を巻き起こして火龍の炎を一瞬にして吹き飛ばした。
「今だ!スレイア!」アエリオンが叫ぶ。
スレイアはアクアスパイラルを放ち、風の中を水が勢いよく駆け抜け、火龍に直撃する。しかし、火龍はただでは倒れない。「面白い。だがまだまだ終わらせはしない!」火龍が再び立ち上がり、全身から炎を燃え上がらせる。
「この試練、思った以上に手ごわいかもな…」ガルムは息を整えながら、再び戦いに身を投じた。火龍は咆哮を上げ、巨大な炎の波を地面に放ってくる。その熱波が押し寄せ、周囲の大地が灼熱と化していく。しかしアエリオンは冷静に火龍の動きを見極め、風の力を使って炎を逸らす準備をしていた。
「まずは俺がいく」とアエリオンが前に出ると、体に風を纏いながら「ウィンドプリズン!」と叫び、竜巻を火龍の周囲に巻き起こして動きを封じ込める。
火龍は竜巻の中で炎を吐こうとするが、アエリオンの風の力が炎を封じ込めてしまい、なかなか攻撃を繰り出せない。
「次は俺が仕掛ける!」とスレイアが交代し、アエリオンから主導権を引き継ぐ。水の力を一気に集中させ、手のひらに強大な水の魔力を溜め込む。そして、「アクアスパイラル!」と一気に放出し、竜巻の中で無防備になった火龍に水の力で大打撃を与える。
火龍は苦しげに咆哮を上げながらも、再び炎を吹き出そうとするが、アエリオンはすぐに次の技を発動し、火龍を圧倒していく。火龍が最後の力を振り絞って炎の嵐を巻き起こすも、「ストームピラー!」の一撃で完全に封じ込められ、倒れる。しかし「まだだ!」とすぐに飛び上がり強烈な炎だ出し続け、スレイアは火龍の激しい攻撃に追い詰められていた。炎の壁が四方を囲み、熱気が彼らの体に押し寄せる。
「これはまずいな…一撃で決めないと!」とアエリオンが焦りを感じながら呟く。
スレイアは冷静に水の力を集め、手のひらに集中し始めた。「ここでアクアバーストを使うしかないわね。」
スレイアが手を掲げると、その周囲に水が湧き上がり、激しい渦を巻いて圧縮される。火龍もすぐにその異変に気づき、さらに強烈な炎を吐き出してきた。
スレイアは「アクアバースト!」と叫びながら技を発動した。瞬間、凄まじい水の圧力が爆発的に広がり、火龍の炎を飲み込んだ。
水と炎がぶつかり合い、激しい蒸気が発生する。しかし、水の力が上回り、火龍の攻撃は徐々に消されていく。最後には、爆発的な水圧が火龍の身体を包み込み、強烈な衝撃と共に火龍を地面に叩きつけた。
「やったか…?」とアエリオンが息を切らしながら言うと、火龍が動かなくなり、かすれた声で「合格だ」と言った後自らの爪で腕を切り、血を差し出す。アエリオンはその血を飲み干すことを決意し、力をさらに強めていった。その後火龍は「試練で少し手を抜こうと思ったが、熱くなってしまった…まあいいかまたな」と去って行った。ガルムは「さて次は確か天竜だっけ?」と言うと、龍那が前に出てきた。
「次は私です。」
「え?ガイドじゃないのか?」ガルムが驚くと、龍那は笑みを浮かべながら話した。
「ずっと機会を伺ってたの。いつ負けるかな?って思ってたわ。龍族じゃない者がどれ程の実力かと思って見てたけど、まぁ思ったよりは凄いけど、大したことはないわね。」そう言って軽く構える。
「私に勝ったら、血をあげるわよ。」
「え?人の血を飲めって?」ガルムはさらに驚くが、覚悟を決めて構える。
龍那は一切動かない。スレイアがつぶやく。「まさか…こっちから攻撃しないと、何もしないんじゃ?」
「じゃあ、水のトラップでも仕掛けてみよう。試したい技があるし。」スレイアはデュアルスピアに力を込め、地面に突き立てた。「よし、アエリオン、交代だ。」
アエリオンに切り替わり、ガルムは言った。「攻めてこないなら、こっちから行くぞ!」と叫び、右ストレートを繰り出す。
拳はあっさり龍那の顔面に直撃し、彼女を吹き飛ばした。「え?こんなはずじゃなかったけど…大丈夫か?」と駆け寄るガルム。しかし、龍那は無傷で立ち上がる。
「今ので本気なら、ガッカリだけど?」
「いや、女性相手に本気でなんて…」と言いかけたガルムに、龍那は鋭い目で言った。
「じゃあ、目を覚まさせてあげる。」その瞬間、龍那が瞬間移動のような速度でガルムに近づき、右ストレートを繰り出した。ガルムはガードするが、その衝撃で吹き飛ばされる。
「速い…!」
さらに、龍那はスピードを上げ、無数の拳を放ち、足払いをしてガルムを浮かせると、腹部に強烈な一撃を何度も叩き込んだ。攻撃の速さと力が圧倒的で、ガルムは防戦一方だった。
「どうしたの?女が相手だからって油断してると痛い目を見るわよ。」龍那が冷たく笑う。
「くっ…!」ガルムはすぐに体勢を整え、「ストームプリズン!」と叫んで、暴風で龍那を囲む。竜巻が激しく巻き起こり、ガルムは反撃に転じる。「これで終わりだ!」と「ストームブレイク」を発動し、竜巻の中心にいる龍那に向けて風の刃を放つ。
しかし、龍那は笑みを浮かべながら一瞬で身をかわし、ガルムの目の前に現れた。
「掛かったな!」とアエリオンが言い、スレイアに交代。待ち構えていたスレイアが、地面から勢いよく水流を巻き上げて龍那を上空に飛ばす。「今だ、アイスプリズン!」
スレイアは一気に水流を凍らせ、龍那を氷の檻に閉じ込めた。「やったか…?」
しかし、その瞬間、凄まじい気迫と共に氷が砕け散り、龍那が現れた。「ふふん、なかなか面白いわね。」龍那は余裕の笑みを浮かべ、次の一手を考えている様子だった。龍那が「今のは本気〜?」と軽く尋ねた。
ガルムは苦しみながらも「ほぼほぼ本気だ」と答える。
「そっか〜、じゃあ合格〜!」と龍那は笑顔を見せると、腕を少し爪で切り、血を差し出した。「どうぞ」と言って、微笑む。
ガルムは一瞬躊躇して「いや…腕から?」と聞くと、龍那は挑発するように「え〜?別の部位が良かった?胸とか?」とニヤリと笑う。ガルムは顔を真っ赤にして「いや…腕でいいです!」と血を飲み干した。
その瞬間、ガルムは全身に広がる激痛に襲われた。
「飲んじゃったね〜、オロチの血を〜。飲んだら最後、呪われた血が全身を蝕んで、最後は死ぬだけよ。」と、龍那が冷酷に告げる。
ガルムは「どういうことだ…?」と苦しみながら聞く。
「今後、私の邪魔になりそうだから消しておこうと思ってね〜」と龍那は冷たい声で笑った。
その時、龍妃が現れ「あなたはオロチさん?」と静かに問いかける。
「あら、龍妃が来ちゃったか。龍那に化けて、バレないようにしてたのに〜。」と、オロチは笑いながら正体を現す。
龍妃は軽く笑って「確かに、龍菜にそっくりね。でも、ここまでして何をしたの?」と問い詰める。
「私は優秀なこの子に試練を与えて、合格したから血をあげただけよ。」
「血を飲ませたの?」と、龍妃は驚く。
「そうよ。あんた達と同じことをしただけ。」オロチは徐々に本来の姿に戻っていく。「やっぱり、こっちの方がかわいいわ〜」と自画自賛。
「それ、ちょっと失礼じゃない?」と龍菜がつぶやいたが、オロチは無視した。「まあ、いいや。私はもう消えるから、あんた達はその子の埋葬先でも考えなさい。」と冷たく言い放つ。
龍妃は凄まじい闘気を放ちながら「ふざけたことをしてると、次は私が相手になりますよ?」と静かに警告。
オロチも少し動揺し「怖い顔しちゃって…今回はこれで引くわ。」と言って消えた。
龍妃は冷静に戻り「血を飲んだのならもう駄目でしょう。せめて苦しむ前に止めを刺しましょう。」
「わかりました。」と龍菜は頷き、ガルムの首を切り裂いた。一方アイリスたちは5階にたどり着いた。アイリスは急に胸騒ぎを覚えた。ララが「アイリスさん大丈夫?」と心配そうに見つめる。「大丈夫とは思うけどなんかガルム君の事を思ったら不安になっちゃって」と言うとヴィスティーが「おしゃべりしてる場合じゃないですよ〜」指を指すととそこに待ち受けていたのは巨大な石の壁と、その前に立ちはだかる土属性の魔術士。
「ヴィスティー、ここも何度か挑んだんだよね?」とアイリスが聞くと、ヴィスティーは苦笑いしながら答えた。「そうなの。私の魔法じゃ全然通用しなくて、攻略は諦めたのよ。あの石壁、どんな攻撃もはじき返してくるの」
アイリスはその話を聞き、少しだけ目を細めた。「じゃあ、試してみるわね」
魔術士が土の大地から巨大な石の柱を召喚し、地面が揺れるような攻撃を仕掛けてきた。しかし、アイリスは微動だにせず、魔力を高めた。「ブリザードテンペスト!」と叫ぶと、氷混じりの強烈な風が巻き起こり、一瞬で石の柱を粉々に砕いた。
「こんなの簡単すぎるわね」とアイリスが自信満々に笑うと、ヴィスティーは驚きを隠せなかった。「すごい…やっぱり風の魔法は土には強いのね」
アイリスはさらに「ストームクラッシュ」を発動させ、巨大な竜巻を召喚。その力で魔術士の防御壁を吹き飛ばし、あっという間に土属性の結界を破壊した。
「お見事! これならどんな土属性も通じないわね」とヴィスティーが感嘆の声を漏らした。アイリスたちが階段を上って6階に到着すると、ララが「次は6階だね」と口にした。「ララさんは何にも活躍しませんね〜」とヴィスティーが冗談を飛ばすと、ララは少しムッとして「私は魔力を回復させてるからいいんだよ」と笑う。「そうでしたね〜」とヴィスティーも笑い返す。アイリスは何かに気づいたように「あ、だから強力な魔法を出しても全然疲れないんだ!」と驚くと、2人は「今更〜?」と笑いながら答えた。
6階に着くと、またいつものように魔術士が立っているのを見て、ヴィスティーが「あの人が立ってるってことは、まだゴールじゃないってことね」と軽く笑う。「今までの流れからすると、おそらく次は雷ですね」とアイリスが推測すると、ヴィスティーが前に進み出る。「え?私がやりますよ」とアイリスが言うと、ヴィスティーは「大丈夫、雷には雷で返すから」と自信たっぷりに答えた。
ヴィスティーが魔術士に接近すると、相手は素早く雷を空から彼女に向かって落とした。しかしヴィスティーは一歩も引かず、手をかざしてその雷をしっかりと受け止める。「お返しよ!」と叫び、「ゴッドブラスト!」と力強く唱えると、ヴィスティーの雷が炸裂し、魔術士に直撃した。激しい雷光が空間全体を包み込み、轟音とともに魔術士が文字通り消し飛んでしまった。アイリスは「ヴィスティーさん、すごい…!」と驚いたが、ヴィスティーは肩をすくめて「相手が弱いと何をしても勝てますよ。でも、土属性には勝てなかったけどね」と苦笑した。
「でもおかしいな…前はそんなことなかったはずなんですけど…」とヴィスティーは眉をひそめ、少し寂しそうな表情を浮かべた。ララも同じく心配そうに「ヴィスティーさん、全然記憶が戻らないんだって…」とつぶやいた。アイリスはそれに気づき、「ヴィスティーさん、記憶が戻らないんですか?」と心配そうに見つめた。
しかし、ヴィスティーはすぐに気を取り直し、「まあ、次に行きましょうか?」と前を向いて先頭を歩き出した。
「次は7階か…もうゴールかな?」とアイリスが言うと、ララが「全然わからにゃい」と言ってしまい、すぐに「あっ、わからない」と慌てて訂正した。それを見てアイリスは「別に言い直さなくても、可愛いのに」と笑った。
7階に辿り着くと、そこには今までとは違う姿をした魔女が立っていた。
「ってことは、これが最後の試練かな?」とヴィスティーが推測すると、ララは「やっと終わるんだ〜!」と喜び、アイリスも「いよいよですね」と気合を入れた。
魔女は静かに微笑みながら、「よくここまで来ましたね。いよいよ最後の試練です。覚悟はいいですか?」と言い、次の瞬間、三人は光と闇のエネルギーに包み込まれた。
「最後の試練は、それぞれが自分の光と闇から抜け出すこと。もしそれができれば、合格です」と魔女は静かに告げた。
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