第12話異変
あー、リーダーありがとうございます。おかげで助かりました。これ、約束の加護石です」とガルムは石を差し出した。
リーダーは軽く笑って「いや、別に石のために協力したんじゃないさ。最初はそのつもりだったけど、途中からは純粋に手を貸したくなっただけさ」と返す。
「そうですか、でも俺が持ってても意味ないし…」ガルムは石を渡し、甲板へと向かう。そこでは、アイリスが誰かと話しているのを見かけた。
「順調です」とか「了解しました」といった言葉が聞こえてきたが、ガルムはあまり気にせず近づく。アイリスは慌てて振り向き、「おかえりなさい! 巨人もヴァルクアも倒せて良かったですね♪」と嬉しそうに言ってきた。
「助けてくれてありがとう。でもあれだけ強かったら、一緒に戦えたんじゃないか?」ガルムが尋ねると、アイリスは恥ずかしそうにローブを少しめくり、スカートを見せながら「スカートで飛び回るのは…ね?」と照れ笑いを浮かべた。
「…まあ、俺は見たかったけどな」とガルムが冗談を言うと、アイリスは顔を真っ赤にし、「バカ〜!」と言いながらも笑い合う。
そのやり取りの後、リーダーの方を見ると、リーダーが帽子を外し、長い髪を風に揺らしている姿が目に入った。
「リ、リーダーって…女性だったんですね?」と驚くガルムに、リーダーは軽く笑って「お前、今まで気づいてなかったのか?」と返す。
アイリスはにっこり笑って「普通に女性でしたよ?」と言うと、ガルムは「すみません、全然気づいてなかったです」と照れながら答えた。
「まあ、子供だから仕方ないさ。だが、今だけだぞ、それが許されるのは」とリーダーが軽口を叩き、ガルムとアイリスは笑い合う。
ガルムとアイリスは冒険者ギルドへ向かった。
「ギルドに行こうか」とガルムが言うと、アイリスも「はい」と頷く。
冒険者ギルドに到着し、中は活気に満ちていた。
ガルムたちはクエスト達成の報告を済ませ、受付嬢に「さっき空島が沈みかけていたのに、誰も気づいてないみたいですね」と話しかけた。
「そうなんですか?」と受付嬢は驚いた様子だ。
ガルムが不思議に思っていると、ガイドが近づいてきた。「確かに、疑問に思うよね。けど、実際には巨人がいた空島が崩れかけていただけなんだ。他の空島は沈む速度が遅いし、特に目立った被害が出てないから、誰も焦っていないんだよ。」
「そうだったのか…」とガルムは納得する。
食事シーンにて、ガルムさんからガルムくんへ。
ガルムたちは食事を取るため、ギルド内の食堂へ向かう。
「とりあえず、何か食べようか」と言い、ガルムは「空島おすすめ定食」を注文。肉や野菜、飲み物に舌鼓を打ちながら食事を楽しんだ。
「この肉、すごく美味しいな! 自分の世界とは違う味だ」とガルムは感嘆し、アイリスも「そうですね! 飲み物も喉ごしが良くて、美味しいです」と笑顔で答える。
「アイリス、これからどうするんだ? もうパーティは解散だよね?」とガルムが聞くと、アイリスは少し悩んだ表情を見せる。「正直、悩んでいます。このまま次の世界も一緒に行こうかな…って、もちろんガルムさんが良ければですけど」と。
「ガルムさんって呼ぶの、やめてよ。まだ8歳だよ?」とガルムが照れながら言うと、アイリスは笑顔で「ガルムくん、このまま一緒でもいいですか?」と問いかけた。
「こんな可愛くて頼れる魔法使いなら大歓迎だよ」とガルムが答えると、アイリスは「ありがとうございます!」と笑顔で喜んだ。
ガルムは掲示板に目を向け、様々なクエストを眺めていた。「迷子を探せ」や「巨大卵を見つけろ」といった簡単そうなものから、怪獣退治など、難易度の高いクエストまでが並んでいる。
その時、他の冒険者たちの会話が耳に入ってきた。「なあ、聞いたか? 風の加護石のクエストを誰かが達成したらしいぞ」
「マジかよ、あの空域ってヴァルクアも出てくるし、イベント戦もあるって噂だぞ? 受けなくて良かった、しばらくはあそこも安全だろう」
ガルムは誇らしい気持ちになったが、アイリスに問いかける。「なあ、どうして誰も受けないようなクエストを選んだんだ?」
アイリスは笑顔で「ガルムくんなら大丈夫だと思ったからです」と答えた。
「大丈夫って…あれは最後に選ぶようなクエストだぞ? エアシューズがなかったらクリアできなかったよ」と驚くガルムに、アイリスは「本当にすごいですね!」と褒め言葉を返す。
ガルムは再度ガイドに質問する。「クエストって、一度達成したらもう出てこないものなんですか?」
ガイドは笑いながら答えた。「厳密に言えば、最初に達成した人は現実の危機を救ったことになるけど、クエストは再構築されるのよ。そうじゃないと、冒険者たちがクエストを受けられなくなっちゃうでしょ? 重要なクエストは何度か再掲載されて、次の冒険者にも挑戦の機会が与えられるの」
ガルムは納得し、「なるほど…じゃあ、ヴァルクアのことも再構築されるんですか?」とさらに質問すると、ガイドは小声で「ヴァルクアのことは極秘だけど、ガチで異世界を支配しようとしてるからね。みんなにはイベント戦ってことにしてるんだ」と教えてくれた。
「エアシューズは次の世界でも使えるの?」とガルムが聞くと、ガイドは「問題ありませんよ」と笑顔で答えた。安心したガルムは、急いでエアシューズを購入し、アイリスと共に次の世界へと向かう準備を進めた。
「じゃあ行くか! アイリス、手でも繋いどくか? はぐれないように?」とガルムが尋ねると、スレイアが「ただ繋ぎたいだけだろ!」と突っ込みを入れる。
アイリスもふふっと笑って「仕方ないな~」と言って手を握り、二人は転送装置へと入った。
光に包まれた瞬間赤い光が見えた。ガイドは転送装置のモニターを見つめ、赤い光が点滅するのを確認すると、驚いた表情で口元を覆った。
「まさか転送先の世界で異変が起きてる!?まずい、急いで戻さなきゃ!」
彼女は転送キャンセルを試みるが、モニターには「エラー」の文字が表示された。
「なんで!?一体何が起きてるの…?」
その頃、ガルムとアイリスはすでに次の世界に到達していた。周囲を見渡すと、空は不気味な赤に染まり、大地は大きな亀裂を入れながら崩れかけていた。
「え?なんかいきなりハードだけど?」
ガルムは呆然としながら状況を把握しようとするが、どんどん悪化する光景にアイリスも戸惑いを隠せない。
「これは何かがおかしいです!」アイリスは震える声で言った。
「まずいな、エアシューズが必要かも…」ガルムは焦りながら、今の状況を打破しようと考えていた。
その時、デバイスに通信が入った。
「その世界の状況は?もう崩壊寸前か?」通信の向こうからガイドの焦った声が聞こえる。
「今にも終わりそうな感じかな?」ガルムが返事をすると、すぐに返答が来た。
「じゃあ急いで転送装置を出すから、待ってて…!」
ガルムは歯を食いしばりながら辺りを見渡すが、大地はどんどん崩れ落ちていく。もう余裕などなかった。
「いや、待ってる余裕はない。もうここも限界だ…!」
その時、アイリスが遠くを指差した。
「あっ!あそこに次元の歪みがありますよ!」
ガルムはその方向を見てすぐに決断した。「あ〜歪みがあったか。とりあえずそこに入るしかない!」
アイリスは不安げにガルムの腕を掴んだ。「待って、何があるか分からないし…!」
「でもこのままここで死ぬよりはマシだ!」
ガルムは手を強く握りしめ、アイリスと手を繋ぐと、次元の歪みに向かって走り出した。そして、二人は歪みの中へ飛び込んだ。
直後、その世界は完全に崩壊し、赤い空も大地とともに飲み込まれていった。
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