3. 小林 涼 (コバヤシ リョウ)
第3話
普段は大学で講師をしている。
・・・一応、学者でもある。
土日は紅茶を飲みながら
映画鑑賞をするのが好きで、
家には常に
数十種類の茶葉をストックしている。
割と多趣味な方で 音楽や 芸術
歴史などにも興味がある。
クラウンスカイタワーで
今日から始まる展示会は
歴史好きの僕には願ってもないイベントだ。
入場料以外は無料とあって
好きなだけ見ていこう、
ということで 一人 やってきた。
足早にブースに近づいたまでは
良かったのだが…
ブース前の自販機に
うーん・・・
ちょっと目つきの悪い人がいる・・・
なるべく巻き込まれないように
歴史ブースは帰りにじっくり見ようかな。
そう思い そそくさと
1階奥にあるエレベーターに向かった。
ちょうどエレベーターは
出発したばかりのようで
待っている人は僕一人だった。
階数の表示を眺めながら待っていると
荒れた息が徐々に近づいてきたのに気づく。
振り返ると
ひとりの女性が足早に駆け込んできた。
「あっ」
女性の少し開いたリュックから
何かが落下したが、
気づいていないようだ。
エレベーター待ちのポジションから離れ、
入れ替わるように 女性が 並ぶ。
僕は落とし物を拾い上げた。
(学生証だ…
涼
「あの これ 落としましたよ?」
愛梨
「あ、 すみません
ありがとうございます
慌てて走ってきたから
リュックが開いちゃって…」
僕の中で 衝撃が走った。
かっ・・・かわいい・・・!!!
なんというかわいい子なのだろう
今まで生きてきた中で 最大級の熱量が
胸の中ではじけ飛んだ。
こんなとき どうすればいい・・・
いかん 落ち着け。
こんなときはそう…
冷静に 深呼吸して・・・
涼
「あの、僕と付き合ってください」
愛梨
「・・・ えっ??」
おいおいおい 何言ってんだ 僕は!!
初対面の 学生に
いきなり告白って ありえないだろ??
涼
「あ、 その・・・ これは・・・」
ポーン・・・
エレベーターの扉が開いた。
愛梨
「すみません・・・
エレベーターが来たので
先に行きますね…」
うわぁ・・・ 行ってしまう!!
愛梨さん・・・!!!
涼
「あ、 あなたのことが好きです!!!」
愛梨
「!!」
チーン…
エレベーターの扉が締まった。
今、僕は何て言った!?
自分の口から出た言葉が数秒遅れて
脳内に響いてきた。
うう…
何をやっているんだ 僕は・・・!!!
気づくと、
エレベーター待ちの人たちが並んでいて、
何人かは 僕を見てニヤついていた。
恥ずかしい ・・・!!
でも もう一度会って
ちゃんと話がしたい・・・
僕は顔を赤らめながら
次のエレベータに乗り込んだ…。
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