2. 渡瀬 輝羅理 (ワタセ キラリ)
第2話
シンガーソングライター
というと聞こえはいいが、
路上ライブで活動する傍ら
バイトで生計を立てている。
午後から遊園地のイベントに出演するのだが
小1時間ほど時間を持て余していたので
近くの ”クラウンスカイタワー” に
行ってみることにした。
受付
「お一人様 2500円になります」
輝羅理
「チッ・・・ 高っけぇな
… はいよ」
予想外の出費だったが、
今日のイベントでのギャラを見込んで
顔を渋めながら 中に入った。
1階は街の歴史について展示された
特別ブースとなっている。
心底 興味はなかった。
自販機でエナドリを買い
壁にもたれかかりながら
退屈を潰していた。
クラウンスカイタワーは街の名所の一つで
観光客や 見学など
県内外 国を問わず
多くの人が訪れていた。
「ねぇ あの人かっこよくない?」
「どこどこ? あ、あの人??」
「きれいな顔〜〜〜!!」
女子高生くらいの3人組が俺をちらちら
見ている。
何やら盛り上がっているようだが、
今日はあんまし時間が無いんだ。
声はかけてくれるなよ?
俺は目つきが悪いほうで
たまにガラの悪いヤツに絡まれることも
ある。
睨んでいるつもりはないのだが…
近寄りがたいオーラのようなものが
出ていると
仲間に指摘されることもしばしばある。
3人組に視線をあてると、
「うっわ 目つき悪っ!
うつむき加減くらいがちょうどいいわ
絶対調子乗ってそー・・・」
「ヤバいよ あのタイプ
無理やり襲ってきそう」
「え〜 アタシはありだけどなぁ〜」
聞こえてるっつーの。
デカい声だな ったく。
早く向こう行ってくれよ うっとうしい。
”70階ラウンジ直通エレベータ” と書かれた表示板がある。
「70階もあんのか…
まぁ 俺の街を見下ろすのも悪くないな」
折角 入場料も払ったことだし、
とりあえず 行ってみるか。
しかし 思考とは裏腹に
体は
全く興味のない歴史ブースに向かっていた。
輝羅理
「あ、アンタ・・・」
??
「ハイ?」
俺は 歴史ブースを一人見学している女性に
一目散に駆け寄って 唐突に声をかけた。
輝羅理
「もしかして
いつも駅前のライブに来てくれて
る・・・」
??
「うっそ? キラリさん??」
輝羅理
「今日も
向こうの”フォーチュンランド”で
イベントやるんだよ
よかったら 来てくれないかな?」
??
「はい! そのつもりです!
まだ時間があったので
ちょっとブラついてました」
輝羅理
「そうか ありがとな
なぁ・・・その
名前は ・・・?」
??
「わたし、
言います」
輝羅理
「アイリ・・・
俺と 付き合ってくれ」
愛梨
「は はい??」
輝羅理
「たのむ!!
俺は お前が好きだ!!
俺と付き合ってくれ!!!」
愛梨
「ちょっと 声が大きいですよ!!
・・・いきなりそんなこと言われても
困ります ・・・
だってわたし・・・」
輝羅理
「もっと アイリのことを知りたい
だから・・・」
愛梨
「ご、ごめんなさいっ!」
愛梨は興奮して詰め寄る輝羅理をかわして
奥のほうへ逃げ去っていった。
「アイリ・・・」
くそっ・・・
俺は 告白ってヤツが壊滅的に下手だ。
生まれて初めて 告ってみたが、
うまくいかないもんだな。
眉間にシワを寄せながら、
俺は最上階のラウンジへと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます