7. 雲外曇天

第61話

ガコン!








あなたの後ろから、物音が聞こえた。






「えっ!?

 梯子が倒れた音?


 イヤイヤイヤ


 でもさっき、横に置いたよね??」






―見てこようか?―






梯子があった場所から100メートルは

既に離れているが、あなたは一度

確認のため 戻ろうとする。 …が、










「待って…?


 待って 待って!?」










ユウが引きつった顔で 何か

言いたげにしているが、









ザッ… ザッ… ザッ…







ザッ… ザッ… ザッ…










「聞こえる?


 聞こえるよね!?  ねぇ!?」











ザッ… ザッ… ザッ…






ザッ… ザッ… ザッ…











―足音??

 しかも、これって…

 1人じゃないよね?


 ちょっと、ヤバいんじゃない?―





あなたの耳にも、

その音は確かに聞こえる。










ザッ…ザッ…ザッ…ザッ





ザッ…ザッ…ザッ…ザッ












「ヤバいヤバい!

 

 段々早くなってるよ!!


 走ろう!!」









ザッ…ザッ…ザッ…ザッ





ザッ…ザッ…ザッ…ザッ











あなたはユウと並んで力一杯走った。










ザッザッザッザッザッザッザッ




ザッザッザッザッザッザッザッ




ザッザッザッザッザッザッザッ




ザッザッザッザッザッザッザッ










思いっきり走っているというのに、

足音は次第に大きくなってゆく。





このままでは追いつかれてしまいそうだ。








「ハァッ! ハァッ!


 ど どうなってんの? コレ!


 おかしいって!


 ハァッ!   ハァッ!」








―たぶん もう少し!


 ハァッ! …ハァッ!!


 もう少しで 入口の筈! ハァッ!


     頑張ろう!―










「こんな時 に… ハァッ!


 本堂で見た 顔の  ない 写真


 思い出した! ハァッ ハァッ!


 まさか 足音 の… 正体って


 アレなんじゃ…!?」





―ちょっと!

 思ってることストレートに言いすぎ!


         怖すぎだって!―





ユウがそんな事を言ったので

あなたも引きつった顔になっている。











「見えた!階段だ!!」









入り口の石階段を発見し、

退路に向かって駆け込む2人。








ザッザッザッザッザッザッザッ







足音は真後ろから聞こえてくる。










ザッザッ ザザザッ

ザッザザッ ザザザ ザ ざ さ


ざ ざざ  ざざざ 



ざ ざざ ざ ざざざざざ


   ざざ














「振り向かずに駆け上がって!」




ユウはあなたを先に階段へ送り、

あなたは石階段を全力で駆け上がる。







―ユウ!! ユウも早く!!!―







ズザザザザ!!







ユウは汗だくになりながら、

あなたに続いて畳の間にまで駆け上がり、


入り口の畳を思い切り投げつけるように

閉めた。






バン!!!










ガタッ!



ガタガタガタッ!






2人で入口の畳を押さえつけるが、

何かが押し付けてくるような感覚があった。







「ゔ ぁ ぁ あ あ ぁ 」









ズザザ…



ドン!!



ドドドド…  ドドッ!!






うめき声のような音と

衝突したような音が響き、



やがて 静まり返ってゆく…。

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