第327話

「コイツが悪ィんだぜ?


 穏便に済ましてやろうと思ってたのに…


 よぉ!!」



ドガァッ!!!




「ぅあ…っ!」





コロン… 





口から血が飛び散り、折れた歯が転がる。






這いつくばる1人と、



見下ろしてわらう3人と、



絶望を見つめるしかない3人。






裏路地付近には助けを呼べるような人は

誰もいない。





「悠馬、プロゲーマーになるんでしょ?

 

 …死んじゃったら、元も子もないじゃん


 

 何で そんなに身体を張ってまで・・・




 おねがい… 


   お願いだから、



    もう やめて… …っ…」


 




傷つき倒れた悠馬に、肩を揺らし大粒の涙を流しながら糸が言った。


視界は涙に遮られ、流れる血が悠馬の顔を塗りつぶすようにぼやけて見えている。








悠馬

「…夢… ね」





「もし手を怪我して使えなくなったり

 したら… 私、 わたし…!


       一生、後悔する…」






悠馬

「好きになった…女子すら


  まもれ なくて…



      何が夢 だよ」





「!!!」






悠馬

「俺の 手は…


  夢なんかよりも



 もっと…


 

  つかみたいモンがあるんだよ…!」





震えた手で地面の砂を握り締め、

満身創痍の状態で 悠馬は立ち上がった。





悠馬

「糸に…


  指一本 触れるな…



  フーッ… 


      フゥーッ…!



    俺が守るんだ…!!



   ハァッ…!



      ハァッ…!!



    大切な人を、



      俺が!!!」






血にまみれながら、目の奥には燃え盛る炎が宿っていた。





「お前、マジでしつけぇぞ… !」





男は再び拳を固めたが…

前屈みのまま詰め寄る悠馬の眼を見るや否や 

半歩、後ずさりしていた。





悠馬

「雑草だってなぁ…


 高嶺の花の 隣で、


 一花咲かすことだってあんだよ…!」







ガッ!!




悠馬は、リーダー格の男に掴みかかった。






胸ぐらを掴まれ、男は悠馬の腕を振りほどこうとするが、振り絞った力は強くびくともしない。




「何で…!


 動かねぇんだよ…!?」




悠馬

「外れねぇだろ?


 掴みたいモンがある男の手はな、


 

 腕が千切れても外れねぇように

        出来てんだよ…!」






噛み殺されてしまいそうな眼の光に、

男は気圧されている。





「やめろ…!


   やめてくれ!」





ドサ…ッ!





悠馬に胸ぐらを掴まれたまま、

男は背中を地面につけた。





「ぐっ…! 目が!!」





滴る血が 男の目に入り視界を完全に

奪うと、男は恐怖を覚え大声で叫びを

上げた。




「何も見えねぇ!!


  たっ… 助けてくれ!!




  ひいいぃっ!!!」

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