第325話

「おい、そこで何してんだ!」






「何だぁ テメーは?


 取り込み中に声かけてんじゃねぇよ」





「 (ゆ… 悠馬!!) 」





路地裏に向かう3人組に対し、

悠馬が吠えた。


糸をはじめ、さな、舞は恐怖のあまり涙を流している。





「お前、山彦殿高校ヤマコーか?



 だったら逆に都合いぃんだけど。」




山彦殿高校と黄瀬山高校は犬猿の仲であり、抗争が耐えない関係にあった。


悠馬が震えたのも、その事情を知った上でのことだ。


一度でも争いの渦に巻き込まれれば、この先も危険な目に遭うだろうし、どんな目に合わされるかもわからない。




「1人で何ができんの?


 無理すんなよ、足ガックガクじゃん」



「ハッハッハッハー!!


 いいよいいよ、

 どーせオメーもヒマなんだろ?


 だったらいいぜ?

 仲間に入れてやっても!」



「バーカ、山彦殿高ヤマコーとツルんで

 たなんて鼠弥ネズヤサンに知られたら

 ぶっ殺されんぞ?」





男たちから聞こえてきた“鼠弥ネズヤ“と

言う名前は悠馬も知っていた。



界隈かいわいに名を馳せる相当なワルだ。



そんな奴に目を付けられたら最後、

人生ゲームオーバーだ。




鼠弥に殴られた人間が、ダンプカーにねられたみたいに吹っ飛んだという噂は山彦殿高校にも入ってきている。









悠馬

「ネズヤ?


 バーカ。


 そんなクソザコにビビってんじゃねーよ


 さっさと掛かってこい、

 路地裏ダイスキなモブ野郎がよ!」







悠馬の口から、

とんでもない一言が放たれた。



頭で考えて言ったことでは無い。




覚悟を決めた男が、本能で吠えたのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る