第300話

キィ…   キィ…




公園のブランコに並んで座り、お互いに近況報告をしあった後、征十郎は少し顔をこわ張らせた。




ジュエルくん、エンドピースのことは

 台苑条さんから聞いたよね?」



「うん、かなり衝撃的な話だったけど」




「本当に、申し訳ない…


 謝って済むことでは無いって

 わかってはいるけれど」



「えっ?征十郎くんが謝らなくても…」





「父親がした悪魔の所業…


 俺は昔から許せなかった。


 許せなかったけど、

      …逆らう力が無かった」





漕いでいたブランコを止めて、征十郎は握っているブランコの鎖に力を込めながら話を続ける。




「親なのに、俺はアイツのことを

 多くは知らない。


 けど、

 アイツはエンドピースの適合者を

 見抜く目を持っていたことは

 わかっている。


 だから、台苑条さんやジュエルくんといった

 特異的な人間の存在を知り、

 直接接触しては埋め込み…


 同胞に成り得る人間を増やしていったん

 だ。

 

 先ずはそれを謝りたかった」




「征十郎くんが悪いわけじゃないし、


 もう過ぎたことだから、そんな顔

 しないで?


 …それに、辛いのは僕なんかよりも

 征十郎くんなんじゃないかな?」






そのような言葉をかけられると思っていなかったのか、征十郎は目を丸くしてジュエルにバッと顔を向けた。

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