14. ずっと、ずっと…。

第276話

泉水の胸には、小さな傷が残っていた。


気づいたら付いていた、という程度で、

痛みも無く特に目立ったものではないようだが…






『ふふっ…


 ジュエル、いつも この傷のとこに

 マークつけるね』




服の上から、傷の位置を指さして言う。




「あっ わかった?


 これはね、僕なりのおまじない



 叶春がもう…

 何処にもいきませんように…って」





『もうって…

 最初から何処にもいかないし』





「うん、そうだったね」





『あ〜、何か隠してるでしょ〜?

 こういうとき、ジュエルはいつも

 舌をちょっと出すクセあるもんね〜』




「んーん、何も無いって…」




『ホントに〜?


    ジュエル…』





泉水はジュエルに被さり、

ソファの上、沈み込み…

唇は甘くふたされてしまった。


リップを塗ったばかりの唇には

優しい感覚の余韻が残り、

泉水を見つめる瞳もまた あたたかく…。




『ずるいよ…


 そうやって 逃げちゃうのは


          ふふっ!』





「逃げるのは得意だからね


 今度 捕まえてみてよ?


   例えば… 僕の唇とか」






(私の年下の彼氏は


 私よりも年下のくせに 

 私より達観してて


 逃げるのも 捕まえるのも上手で


 私の心ごと ハグして…


 

 …いつも優しいキスで 

  意識ごとさらってしまう… )

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