第277話

『もう9月かぁ


 あと3ヶ月でジュエルの誕生日だね』




「うん、どこか出かけたい?」





『お出かけもいいし、

 お部屋に居るのもいいし、


 ジュエルの好きなようにしていいよ?』





「楽しみにしとくね、クリスマス



 そうだ、そういえば

 テーブルに飾ってある花って…?」





『キレイでしょ?


 何ていうお花か、知ってる?


          この白い花』




「ふふふっ


 もちろんわかるよ


 でも いつの間に?」





『昨日ね、

 ジュエルが学校に行ってるときに

 園長さんが来て、園の庭にいっぱい

 植えたから 今度見においで?って


 …そのあと孔雀畑さんと長電話してたから

 すっかり忘れてたわ…。


 それで、お裾分けしてくれたんだけど

 ついさっき ジュエルが支度中に

 飾ってみたんだ』




「料理に夢中で気づかなかった…


 そっか、昨日じいちゃん来たんだ?」





『ジュエルの花… 私も大好き。



 香りも好き。


  

 不思議とね・・・


 見てるだけで、

 優しい気持ちになれるの…』





「叶春もこの花に気に入られたみたいだね


 じゃあ、

 今日からは2人の花にしよう


 これからも、

 ずっと一緒にいられますように…」






その白い花は 2人を繫ぐように


穏やかに 微笑むように


テーブルランプの光に包まれて


優しく語りかけてくるように…。







泉水もジュエルも、

何か心に届けられたかのように

花を見つめ、笑みを浮かべた







“人は誰でも 優しさをもって生まれてくる。


 優しさが誰かの助けになったり、


 誰かに助けられたり…


 そうやって 人は生きていく。


 時に、

 優しさゆえに傷つくことだってある。


 ただ その傷は 誇らしい。


 誰かに向けた優しさが届かずに

 踏みつけられ 傷ついたとしても


 あなたが咲かせた花は、

 いつかあなたを助けてくれる。


 褒められることがゴールではないけれど


 あなたを1番理解している人、


 あなた自身、

 自分で自分を褒めてあげたら

 きっと前に進む力が生まれるはず。


 あなたが生まれてきてくれたことに

 ありがとう。


 花びらひとつひとつ、

 あなたへの感謝を込めて…“



 


 









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