第269話

「いずみちゃん、


 もう一つだけ…


     いいかな?」




神妙な面持ちでジュエルが泉水を見つめる。


その瞳に、魔力は無くとも

息を呑むほどの 限りなく深い透明感と

宝石でも比べ足りないほどのきらびやかさ。


きらびやかなのに、騒ぐことなく

静かに煌めいている。




『なぁに?

 ジュエルくん…』




その瞳は、

宝石よりもきらきらしていて



その視線は、

心の奥深くにまで届くほど直線的で…



その声は、

何度でも琴線を優しくなぞっては

心地良いゆらぎを与えてくれる。





「今まで、自分の感情と言葉の間に

 一枚なにか隔てていたみたいな…

 自分なのに自分じゃないような、

 何か邪魔された感じがあった…。


 けど、今なら自分の意志をそのままに

 言葉にして伝えられる気がする。


 頭の中、

 ウソみたいにすっきりしてるから。


 だから…

 僕がずっと言いたかったこと、


 いずみちゃんに 初めて伝えるつもりで

 言うね?」

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