第59話

『猫、飼いたいの?』




「こんなとこに捨てられてちゃ

 可哀相だし…


 でも、家では飼っちゃダメって

 ママに言われてるから


 せめて少しでも傍に居てあげたくて」




視線を落として哀しげな顔で猫の喉を

指で撫でる雫。




『そういう事だったら、

 俺が家で飼うよ』





「えっ?


 ほんとぅ!??」



『うん。


 うち、聞いたかもしれないけど

 父親も今居ないし 俺が家で飼うのは

 問題ないし


 ってか親の許可とかとらないけどね

 

 あんなヤツの…!』





フクザツな悩みがありそうだなぁ…

という表情を浮かべつつも、





「くすっ!」




『あれ、俺 なんか変なこと言った?』




つい笑いを零してしまった雫。

その理由は…




「ごめんね


 だって、征十郎くん


 どうみても、"ボク“ って感じの顔

 なのに、”俺” とか言うから


 ちょっと違和感あって」




『えー、ショック


 俺って馴染んできたと思ってたのに』




「あっ、変ではないよ?


 変ではないけど、特に昔から

 見てきた人からしたらさ


 いつから俺にしたの?」



『高校から…かな?』



「高校デビューかぁ


 ねぇ、 1回だけ僕って言ってみて?」



『…僕…』




「あー、それそれ!


 やっぱり征十郎くんは僕が似合うよ」




『んー… そうかなぁ』

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