第29話

『それ…


 ボクもいつかはするのかな…?』




「えぇ、


 いつか… 征十郎様が大切に思われる

 方と …ですね」




『なんだか… 恥ずかしくなっちゃった』




「そうですね、


 …ですが、尊いものですよ」




『とうとい?』





「はい、とても尊いことだと思います」






アリスは、人を好きになるということ、


人を愛すること、


命を生みだすということ…



その尊さを征十郎に説くと、




征十郎は物凄く真剣な顔でアリスの話に聞き入り、時折 深く頷いていた。



その様子から、尊さというものを誰にも

教えられなかったのだと思い、

哀しい気持ちが込み上げてきたアリス。







『そっか、


 少しわかった気がするよ』




「征十郎様は凄く、真っ当なお心を

 持ってお生まれになられて…


    正直、安心しました」





『えっ…?』





「例えばですが…


 征十郎様が大切になさる方が、


 他の誰かと同じように、

 そういった行為をしたとすれば


 どうでしょう?」





『悲しいよ。


 ・・・胸が、


   ズキン ってなる』





「えぇ、やはりそうですね


 征十郎様のその感覚は、至って正常

 なことです」





ずっと前から思っていた事ではあった。


アリスは征十郎の尺度というものを

確認し、もしも間違った方向にあれば

正してあげる必要がある、と。



母親の代わりになりたいなどと大それた

ことではなく、常々 力になりたいと

ただ 心から思っていた。



いつしか冷酷な少年にも、アリスのそんな

想いが届き 今では慣れ親しむようになり、


更には…





『ボクは今、アリスを想って

 そうなったよ』





「征十郎さま…!


 そんな、私ごときが…


   そのような・・・!!」




『ううん、


 アリスがいい。


 ボクは、アリスのこと


       大好きだよ』





ズキューーーーーン!!!




「はわわ…


 可愛ゆすぎて、


 尊すぎて、 死にそう…!!」




ただ1人の親よりも、

最も心が近い存在となっていった。








『でも、なんで


 そんな事聞いたの?』







「これは、言い難い事なのですが…



 ここだけの話にしていただければ



 お話させていただきます…。」

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