第15話

―――――…





「…なるほど…


 それは、ヤキモチというものですね」




『焼き餅?

 どんな感情なの?


 何故、餅??』




「あぁ…征十郎様、

 ハテナをたくさん飛ばされてますね


 ふふふっ」



困惑顔の征十郎を見るアリスは、警護中の

表情とは打って変わり、ほわほわとした

ものを飛ばしながら微笑んでいる。


その心の中では…








(かっ…

 

 かわゆ!!



 身体中からほとばしる癒し薬…

 正に ディシン!


 アリスちゃん、も〜うメロメロなの!


 あぁ 征十郎様… 


 ヨダレ垂らしても、

      怒らないでくださいませ…)


 





本来なら綻ばせた表情に際限は無く、

何処までも崩せる自信があるが、


持てるべき自制心を全力で注ぎ込み

表情を固めた結果、軽く微笑む程度に

押えこんで見せるアリス。







『んー… まだ答え言わないでね?



 餅… 柔らかくて伸びる


 つまり、柔軟性?』





なぞなぞ形式の会話には興味があるようで、

愛苦しい顔に手を当てながら頭をひねる

征十郎。


その本来のものであろう柔らかい表情には邪な気配は感じられない。



ただならぬ家に生まれたとはいえ、

征十郎が10才であることには変わらない。



このように時折見せる子供らしい顔は

アリスにとってたまらないものだった。

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