第16話

『自分の中に無い感情を想像するのって

 結構大変なことだね…


 ってゆーか、できるのかな?』




「うふふっ! 

 そのうち、私が教えて差し上げますよ」





――――――――――――――――――――…





約1時間ほどが経過。






「本日はまだしばらくかかるかも

 しれませんね。


 ご要件だけお伺いしますので、

 征十郎様はお戻りになられたほうが

 宜しいのでは?」




『いやだ。


 アリスと一緒に居たい。』




アリスのスーツにしがみつきながら、征十郎が大きな瞳で訴えてくる。




「うふふ… 困りましたね。



 (本当に困るのよ!


 そんな可愛ゆいお顔でそんな事を

 言われたらアリスちゃん、

 食べちゃいたくなっちゃうじゃない!) 」




可愛さ余って変なことを頭の中で巡らし、

顔に両手を当てながら身を

クネクネするアリスを、不思議そうな目で

征十郎が見つめている。




「征十郎様、あまり遅い時間までこちらに

 居ては 旦那様に叱られてしまいます

 ので…」





『わかったよ…。』




「ありがとうございます…



 (本当は哀しいのよ?


 本当は離れたくないの!


 それだけは感じてくださいませ…!) 」





『ねぇ、アリス


 ひとつだけいい?』




「なんでございましょう?」





『パパの仕事って…


         何?』




「それはですね…


 実に深いご質問でございます


 (実は知らないって言ったら

 怒るかな!? 怒るよね!??


 怒った顔も見たいけれど…


 でも本当に知らないのよ・・・


 旦那様、世界の要人達と何か

 話してるけど、


 私ら使用人に何も言わないし) 」




『…あれ?

 

 もしかして、アリスも知らないの?』




「はい… 


 お恥ずかしながら、


 実は我々 使用人も存じませんのです」




『あっはは!


 アリスでも知らないことって

 あるんだね!』




「あははは…


 (そこ、征十郎様のツボだったの!?


 なん…って屈託のない笑顔!!!


 ラッキースマイルゲットだぜ!!



 知らなくて得することもあるのね・・・


 はぁあ〜… 幸せ…) 」

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