第11話

午後の授業が始まったが、タカヤの姿は教室には無い。




トッ… トットッ…


トッ トッ トトッ…




マーカーがホワイトボードを刻む音だけが響き、昼下がりには似つかわしくない程の張り詰めた空気感が漂っている。



噂を耳にしたのだろうか…

トイレでの一件を目撃した者はこの中には居ない筈だが、まるで惨殺シーンでも見てしまったかのように息を呑み、心無しか背筋をぴんと伸ばしている児童が多い。



悟りメタルという異名でイジろうとする者も皆無だ。




マナはチラチラと横目で 隣に座る征十郎を気にしており、板書する手が止まっている。





『何?


    さっきから』






「ご… ごめん」






征十郎から声を掛けられ、普段であれば喜んで声を張るところだが 重圧を感じ、たじろいでしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る