第10話

尻と両手を床につけ、上半身を仰け反らせたままガクガク震えるタカヤに顔を近づける征十郎。


タカヤのあごを右手の人差し指でクイと上げると、鋭いナイフを思わせる左手の先端を喉元に近づけてゆく。




影が顔にはりついて表情が見えないが、

下弦の月のような口元だけがタカヤの目には映っている。









バンッ!!!



「そこで何をしているんだ!?」






勢いよくトイレ入り口の扉が開くと、

教師が2人の間に割って入った。





タカヤが征十郎をトイレに連れて行く姿を見ていた児童がすぐさま教師に伝え、駆けつけてきたようだ。



「別に何も。


 あとは、この人に聞いて?」




征十郎はそれだけ言うと、教師が制止する手をほどいてその場を後にした。





「ぁ… ぁぁ… あっ…


  あっ… ぁぁ ぁぁ あ ぁ…」




「大丈夫か!? タカヤ!!


 どうした?? 何があったんだ!??」




タカヤは何も答える事が出来ない。


とてつもない恐怖を感じたため、失禁したまま震えが止まらずにいた。

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