第7話

中にはそのドライさが堪らないと思える人も少数居たが、周りが何をどう思っていようが、征十郎は何者にも無関心だった。





片道10kmの通学路を歩ききり、席につくと

隣の女子がすかさず話しかけてくる。





「征十郎くん、おはよ!


 アタシが昨日言った動画、見てくれた?」




『見てない。


 興味もない。 じゃあね。』




「もう…


 ほんっとうに 冷たいなぁ」




会話は終了。

つけ入る隙も無く、寄せては返す波のように

ただ見送るしかない、

永遠を感じさせる距離感。


喜怒哀楽が無いので金属のように冷たく

無味無臭、起伏の無い感情が無機質だ。






「マナ〜、もうよしなってー



 さとメタ… じゃなくて

 征十郎くんに近づいた所で何か変わる

 かも?なんて期待するだけ無駄だよ?」



「ちょっと! 聞こえちゃうじゃない!


 その呼び方はもっとダメ!」



「いぃじゃない


 でもホントよしなって」



「んー、でもさー…」



「顔ね? ハイハイ


 それはあの顔なのはわかるけど

 中身がね〜…ちょっと…どころではなく

 とんでも…」




この頃ついた異名は、"悟りメタル"



小学生が考えたあだ名なので深い意味は無いと思うが、まるで悟りでも開いたかのような物言いと、能面のような無表情さと冷たい鉄のような心とが合わさって出来た名前だと推察される。



クラスの中では…

悟りメタルに悟られないよう、

"さとメタ"などと略す派と、

悟られても構わないという略さない派と、

名前で呼びたい派の3つに分類されていた。



つまり、鉄のように冷たい男子でありながらも、ルックスが助けているのか興味の的に当てられがちではあったため、本人の意志とは無関係に陰ではイジられキャラに分類されている、というのが実態だ。

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