第19話

射沙波はフェイントを織り交ぜながら

攻め立てるが

一向に当たる気配がない



射沙波

「(おかしい・・・!!


     百戦錬磨のこの俺が 

     翻弄されているだと???


     もう5、6分はこの調子だ…


     ヤツは試合後だろ??



     クソっ!! 


     こっちの 息が

       切れてきたぜ・・・!!)



    ハァっ・・・ 


       ハァっ・・・ !!



    だが、

    "怖さ" は感じねぇっ!」




8番

「・・・先ずは 目的を話そうか…?


   何をそんなに息巻いているのかな?」



射沙波

「ハァっ! 


       ハァっ!・・・ 



     うるせぇっ!


    さっきの


     袋を  ッ


      返しやがれ …ッッ!!!」




8番

「袋・・・ 


    あぁ さっきの・・・


  ・・・いいけど・・・ 


  そんなに大事なものなの?」



射沙波

「少なくとも・・・ 


    俺にとっちゃぁ


        なッ・・・!!」



一撃狙いの大振りの拳は 

未だに当たる気配がない



8番

「なるほどね・・・ 


    なんとなくわかってきたよ



   わかったから いったん、

      手を止めてくれない?」




射沙波

「うるせぇって 

      言ってんだろッッ!!!!」



ブン!!! 

と鋭く空を切る音が

そのまま射沙波の危険度を示していた



8番

「当たったらヤバいな


   ふぅ…」





拳をかわし 耳元でささやく声




8番

「・・・ 少し 

   話を聞いたらどうだ?」





射沙波

「 !!! 」




ゾクゥ…!!!



まるでナイフを突きつけられたように

全身に戦慄せんりつが走った





これまで 

喧嘩はいつだって優位に立ってきた


どんな相手だろうと 例外なく


しかしこの男は異質だった




「強い」 ではなく 「怖い」



なんとなく 意味が通じた



こんな戦いがあることを知らなかった



当たらない ということではない



隙があるのに一切手を出してこない



出せない のではなく 出さない


これは、

”いつでも やれる ”

という狂気のメッセージ


…と 射沙波の経験が理解した 




8番

「 まだ続けるなら・・・ 


   こっちから行ってもいいんだよ?」



振り上げた拳を静かに下し、

射沙波は荒れた呼吸のなかで言った



射沙波

「 ハァ…


       ハァ…



    ・・・ まいった・・・



      ・・・・・降参

    

          だ・・・・・ 」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る