第42話 アリスと霊子は強い......だけど魔族はもっと強い。


今回はフルメンバーで討伐に来た。


「俺の出る幕が無い」


「リヒト様、だから言ったでは無いですか? アリスは強いと」


アニマルだ……野性だ……


思わず、ぽかんと馬鹿みたいに口を開けてしまう程強い。


オークと言えば精力が強くて女の敵。


そう思っていたが……今の俺にはブタさんに思える。


「ぶもぉぉぉぉぉーー」


アリスに腕を食い千切られて泣きながら逃げているが、それをアリスが許さない。


アリスは犬の獣人だ。


そういえば、チワワですら嚙む力は100キロ位で人間の指位は簡単に嚙み千切ると聞いた事がある。


中型犬や大型犬にもなれば、到底人間が叶う相手じゃない。


人間の大きさの犬が居たら……普通に考えて相当強い。


そんな物に噛みつかれたら……まぁこうなるな。


口の周りを血だらけにしながらオークのお腹を噛みつき引き千切り、引き裂く。


まるでオークが狼に襲われた獲物みたいだ。


泣きながら倒れたオークに噛みつき、ひたすら肉を噛み千切るアリスは……


野生って凄いな。


それしか言えない。


それにしても、これはもう討伐じゃない。


狩りだ。


「そうだな……」


これは肉食動物が捕食しているだけだ。


だが、それより強いのが霊子だ。


「はぁぁぁーーーっ」


剣を渡したら、片っ端からオークを狩っている。


霊子が一振りするごとにオークの命が絶えていく。


これが、本来の異世界人の力なのか……


いや、ネクロマンサーの力なのだろう。


剣で戦っている様に見えるが、剣から黒い煙のようなものが出て死んでいく。


ただ、剣で斬り殺しているのでなく、ジョブかスキルの力を使って倒しているのかも知れない。


凄いなぁ~


今、倒しただけでざっと12体。


オークの討伐報酬だけで金貨3枚と銀貨6枚、ざっと36万円


肉の買い取りを入れれば金貨9枚と銀貨6枚、約96万円。


100万円近い金額が1日で稼げた事になる。


これならお金に困ることは無いな。


いや充分稼ぎすぎだろう。


結局、そこから3体のオークを二人は狩り、合計15体のオークを狩ってその日の討伐は終わった。


1つの群れを滅ぼしてしまった……凄いな。


◆◆◆


「凄いじゃないか二人とも」


「アリスは犬の獣人だから狩は得意なのです!」


小さな胸をえっへんと張るアリスは、まぁ可愛らしい。


「これでも異世界の戦士でしたから……ただ、私は弱くてこれ以上は強くはなれません」


それでも十分だけど何故だ?


「何か理由はあるのかな?」


「死んでいますから……この体は死体なので鍛えても成長しないんですよ! まぁ朽ちないで若いままの容姿で居られる変わりに成長は無い……そう言う事ですね」


確かに若いままの体で固定されると言う事はそこからの成長は無い。


当たり前と言えば当たり前だ。


だが、今の霊子はかなり強く感じる。


「霊子、魔族ってかなり強いのか?」


「強いですね! 多分、私が5人居ても並の魔族じゃ勝てないですね」


「!? それじゃ異世界人かなりヤバいんじゃないのか?」


「かなり、ヤバいですね、ちょっと良いジョブ位の人間は戦って死ぬか、私達みたいに戦えない位の重傷を簡単に負います。まともに対抗できるのは一握りだけですね」


「それじゃ、魔族との戦争はかなり人間側がヤバい、そういう事か?」


「それが、魔族に対して人間側の方が圧倒的に人数が多いから、そうでもないですね……簡単に言うなら魔族1人倒すのに人類が10人以上犠牲になってようやく倒せますが、人間側の人口が遥かに多いから、均衡は保っていますね」


「そうか」


だが、それは異世界人を含み沢山の犠牲の上で均衡が保れている。


そういう事だ。


霊子ですら苦戦する魔族となんて戦いたくない。


やはり、俺は……魔族に関わる事は絶対にしない。





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