第41話 俺だけ冒険者


「アリスも行きます! お留守番はもう嫌です!」


いつも通りに討伐に行こうとしたらアリスにそう言われた。


確かに、一人で留守番は辛いのかもしれない。


この世界にはゲームもライトノベルも無いし、一人で宿屋で留守番はきついし寂しいよな。


だが、それでも......


「いや、だけど危ないから流石に……」


「リヒト様、過保護すぎますわ。 アリスは獣人にしては弱いとはいえ獣人です……普通の人間よりは強いですわよ!」


「まぁ、普通の人間よりは強いよ! 体力だけならリヒト様よりあると思う!」


メリッサと霊子の言う通りかもな。


だけど、もしアリスが強いなら何故スラムに居たんだ?


「そうなのか? だけど、それなら何でスラムに居たんだ? 冒険者として食っていけただろう?」


「アリスが魔物を狩って来てもお金をくれません! それに王国や帝国ではアリスは冒険者にすらなれません!」


そうか……此処にも獣人差別があるのか……


「確かに獣人差別の王国、帝国じゃそうですわね」


「王国や帝国は獣人の扱いが酷いですからね! それに万が一登録が出来てもリヒト様の奴隷ですから基本扱いは同じですから、そのままの方が良いかも知れませんね」


何か変わるわけじゃないなら、そのままで良いか?


「それじゃ、今日はアリスも一緒に行くか?」


「はい!」


アリスは尻尾を振って嬉しそうだ。


そういえば、霊子の方はどうなんだ?


冒険者ギルドで登録するのは不味いよな?


虫食い状態のステータスだけでもおかしいが、それに増して無くなったはずの手足や目が治っている。


しかも30年前から容姿が変わってない。


知り合いにあったら可笑しく思うだろう。


「そう言えば、霊子の方は冒険者として問題は無いのかな?」


「問題がありますよ! 私は魔族との戦いで戦えない体になったから、戦いから解放されました。 まぁそう言うていで戦いから逃げていますから、体が治ったなら戦いに参加とか言われかねません。 それに、昔から容姿が変わってないからその説明もつきませんし、それにほら……」


そう言うと霊子は俺の手を掴み胸にあてがった。


フニフニと柔らかい感触が手に……うん? 冷たい……


「冷たいし、心臓が動いていない」


「死人憑きですから、この体は生きている様で死んでいます。 一応冒険者登録はありますが、使うと厄介なのでもう放置状態にしています」


それなら、一緒に居た5人とはどう言う付き合いだったんだろうか?


「それなら一緒に居た5人は?」


「最初の仲間じゃなく、スラムに流れて来てから知り合った人たちですね」


確かに、そうじゃなければ可笑しいか。


「そうか……」


「はい、それに容姿が変わらないのを可笑しく思われないように旅から旅をしていましたし、かなり前から、ギルドにも関わらず生きてきました」


確かに一箇所に長くは住めないし、ギルドも利用したら不味いよな。


凄く大変そうだ。


「結構大変なんだな」


「年単位の話ですから、思っている程大変ではないですけどね」


結局『冒険者登録は俺1人だけ』か。


取り敢えず……年単位で居られるなら……また、此処でも賃貸住宅でも探すか。

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