第34話 ここにもあったイーリス亭


騎士たちに守られながらガンダール帝国迄の旅。


何も問題は起きず無事についた。


尤も、あと少しでたどり着く所迄既にきていたんだけどな。


帝国の入り口も騎士たちと一緒だからか、待たされることも無く簡単に素通り。


ちなみにイケメン騎士はアークと言う名前で帝国騎士の小隊長をしているそうだ。


例の首チョンパは街道沿いだけの話だそうで、罪人に輸送途中に逃げられたり、反撃を喰らったらたまらないからの処置だそうだ。


勿論、村や街ではしっかりと取り調べをしちゃんと法に則り処罰される。


騎士たちと一緒に兵士の詰め所に行き、俺とアリスが状況を説明。


その後、更にアークが事情を説明して首を提出した。


事情を聞いた兵士がアークたちから聞いた話を、そのまま書類にしてくれた。


「貴方には全く非ありません、その事を書類にしました。こちらを冒険者ギルドへ提出して下さい」


との事で……口下手な俺は凄く助かった。


ここで、アーク達騎士と別れ……冒険者ギルドに貰った書類を提出して今回の依頼は無事終わりだ。


此処は帝都。


三大国の中では一番魔国からは遠い国……そして同郷の人間が居る場所だ。


住むには凄く良い場所だ。


◆◆◆


「リヒト様ぁ~これからどうしますか?」


『そうですね? どうします?』


「今日の所は宿屋だな……暫くしたら貸家探し、そんな所か」


冒険者ギルドで、獣人でも断られない宿屋を聞いたから、そこに向かっている。


「なんだこれ……」


「リヒト様ぁ~此処もイーリス亭って言うんですね?」


名前が同じだけなら、此処まで驚かない。



名前だけじゃ無く、宿屋の作りまで凄く似ている。


「あの……」


「あいよ、おっ獣人の子を連れているんだな? うちは金さえ払ってくれればお客さまだ。気にしないで使ってくれ。風呂無しの部屋なら銅貨6枚 風呂付なら銅貨8枚だ。飯代は2人2食で銅貨3枚だ。どうする?」


なんか何処かで聞いた料金設定だな。


「まるで王都のイーリス亭と同じ様な金額ですね……もしかして知り合いだったりします?」


「ああっ、あそこは親類の店だ……ちなみにイーリス亭は聖都にもあって金額は同じ! どこでも同じ金額で泊まれて基本サービスが一緒なのが売りだ」


「成程……それじゃ銅貨8枚の部屋で食事つきでお願いします」


「あいよっ! それじゃ2階の角部屋を使ってくれっ!  割と良い部屋だぜ」


あそこは凄くサービスが良かった。


期待が持てるかも知れない。


「ありがとうございます」


階段を上がり2階の部屋に来た。


「リヒト様ぁ~アリスの見間違えでしょうか?」


「いや、見間違いじゃない……全く同じだ」


王都のイーリス亭とドアのデザインからベッド、テーブルまで全部同じだ。


家具の配置まで同じだから、同じ部屋に戻ってきたのかと、思わず錯覚してしまった。


「リヒト様、どうかされたのですか? アリスの様子もおかしいのですわ」


メリッサは王都で住んでいた宿を知らないからな。


「いや、この部屋が、メリッサの憑りついていた家に引っ越す前の宿と部屋がソックリだから、驚いただけだよ!」


「そうですか……私は知らないので共有できなくて残念ですわ」


しかも、店主の容姿迄そっくりなんだから、驚くよな。

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