第16話 屋敷の謎


宿屋の親父さんに話をし、今日で宿屋を出る事を報告した。


「そうか……凄く残念だが! 今日の夕食は最高の物をご馳走してやるから、今迄ありがとうな」


今日でもう宿屋生活は終わり、明日からはアパートメント処か一軒家暮らしだ。


宿屋の親父さんの用意してくれた最後の晩餐はミノタウルスのステーキだった。


◆◆◆


翌日、アリスと一緒に買い物に行き屋敷に移る準備をした。


と、言っても殆ど買う物は無い。


何しろ食器や寝具まで全部あるから、必要な魔石と食材位しか買う物は無い。


新生活を始めるのに必要な物は揃っている。


掃除もされていて、精々する事と言えば、掃除と布団を干す事位だ。


「今日から、此処が新居だ。しかし、凄いなこれ」


「本当に、綺麗なお家ですね」


4LDKの一軒家。


豪邸とは言えないが2人で暮らすなら充分に大きな家だ。


前の世界で考えたら、東京の一等地にあれば億単位の金額で売られていてもおかしくない。


それが賃貸で約3万円。


幽霊様様だな。


ドアを開けて中に入ってみると……


「本当に綺麗だよな、埃一つ落ちていない」


「お掃除すら必要ないですね、まるで誰かが住んでいたみたいです」


不思議な事に、カビ臭さ一つしない。


まるで少し前まで誰かが住んでいて掃除でもしていたかのようだ。


そのまま、部屋を見ていくがどの部屋も綺麗な物で掃除の必要はない。


寝室の毛布すらカビの匂いがしない。


「本当に綺麗だ、掃除が必要ない状態だ」


「本当ですね……洗濯すら必要ないですね」


これは幾らなんでも可笑しすぎる。


やっぱり、本当に幽霊が居るのかも知れない。


「もしかして、本当に幽霊が居るのかも知れないな」


「そうですね」


アリスの顔を見ていたが怖がっている様子はない。


大丈夫なのかな?


「アリスは幽霊とか怖く無いのか?」


「アリスは怖くないですよ! アリスにとって怖いのは人間です! アリスに酷い事するのは皆人間ですから……幽霊さんには会った事ないですが、アリスに酷い事しないなら問題はありません」


アリスはスラムで相当ひどい事されていた。


暴力を振るわれていたアリスからしたら幽霊なんかより人間が怖いか……まぁ当たり前だ。


「まぁそうだよな……俺も幽霊は怖くないから問題はないな」


だけど、不思議なのはこの間もそこそこ綺麗な部屋だったが、食器や寝具は洗わないと使えない位の汚れはあった。


今はそれが綺麗になっている。


何かがこの家に本当に居るのかも知れない。


だけど『掃除や洗い物をしてくれた』と考えたら、悪い存在じゃないと思う。


こんな家事をする様な存在なら幽霊だとしても女の可能性が高い。


それなら……問題は無いな。


男なら、嫌だが……女なら良し。


そして可愛ければ尚さら問題無い。


大体、日本の幽霊は美人ばかりだ。


番町皿屋敷のお菊さん。


牡丹灯篭のお露さん。


映画で井戸から出て来る恐ろしい幽霊を見たが……やっている女優は凄く綺麗な人だった。


恐いシーンもそれを意識したらもう美少女にしか思えなくなった。


『俺に危害を加ないなら問題無い』そう思えるようになっていた。


それに悪い物だとしても……この世界にはリアル女神様がいる。


教会に相談すればきっとどうにかなる筈だ。


と……楽観的に想っている。


◆◆◆


今日からは自炊をしないといけないので、アリスは作れないので、俺が食事を作った。


「どうかな? アリス!」


「美味いですぅ~ これアリス頬っぺたが落ちちゃいます~」


今日のメニューはオムライスだ。


ケチャップライスに蕩ける様なふわふわ卵。


ケチャップでハートマークを書いて出来上がり。


それにスープをつけた。


俺は自炊は得意だが、作れる料理はお子様料理が多い。


カレー、ハンバーグ、オムライスなどだ。


気に入って貰えて良かった。


「そうか、良かった……卵は無いけど、ケチャップライスはお代わりがあるけど食べるか?」


「食べます! 大盛でお願いします」



アリスの皿にケチャップライスを盛ってやった。


ちなみに、イシュタス様の像はしっかり安置して、オムライスと水をお供えしてある。


最悪、幽霊が危ない奴だったら……一心不乱に祈ろう。



やる事も無く、アリスとお茶をしたり話したりしながらその日は過ごし、夜を迎えた。



「そろそろ、お風呂に入って眠るか」


事前に水の魔石で水を張り、火の魔石で湯は沸かしてある。


「リヒト様~一緒に入りましょう? 良いですよね?」


真剣な眼差しで見つめられ、断る事は出来ず……そのまま入る事になった。


「いいよ……入ろうか?」


「はい!」


嬉しそうにアリスはポイポイと服から下着から脱いでいく。


『脱ぎっぷりが良い』


それが一番近い言葉かも知れない。


セクシーさは全く無く、無邪気な子供が勢いよく脱いでいく。


そんな感じだ。


お互いで背中を流し合って、今は二人して湯舟に浸かっている。


俺が後ろで前にアリスが座るような感じで湯舟に浸かっていた。


「気持ち良いですねリヒト様ぁ」


「そうだな、凄く気持ち良いな」


アリスのお尻にアレがあたっている。


気を付けないと勃ってしまう。


どうにか、別の事を考え、やり過ごす事が出来た。


『どうするかな』



ベッドは二つあったので別々に眠ろうとしたがアリスが俺と一緒に眠りたがった。


「アリスと一緒に寝るのは嫌なんですかぁ~」


と泣きだしそうな目で見られ、そのまま一緒のベッドで眠った。


そして、アリスはすーすーと寝息を立てて眠っている。


だが……本当に幽霊がいるのか下から何かが歩いている様な足音が聞こえてくる。


『なんだろう』


気になった俺は確かめる為に、ベッドから起きあがり下に向かった。


音を辿って下へ行くと、どうやら音が聞こえてきたのはキッチンからのようだった。


ガチャ


扉を開けると……そこには……


体が透けた美女が居た。


「見ましたわね…….」


「ああっそんな姿で居るのが悪いんじゃないか……な」


相手は幽霊で透けて見えるが、見える物は見える。



金髪に吊り上がった目。


気の強そうな感じだが整った顔立ち。


スラっとしたスタイルだが、出ると所はしっかり出ている。


しかも、そんな美女がスケスケの薄紫のネグリジェを来て、同じくスケスケのピンクのブラとパンティを身に着けている。


見てしまうのは仕方が無いだろう。


「……? 貴方は何を言っているのですか? おかしいですわ」


「いや、そんなスケスケの状態で立っていたら、見てくれと言っている様な物だろうが」


「えっ、嫌ですわ……私は幽霊ですのよ? まさか、そんな目で見てましたの! 嘘......」


そんな裸同然で居るのに、何故胸を押さえて嫌そうな目で俺を見るんだよ......



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