第8話 イシュタスSIDE 女神のお茶会


「イシュタス、随分と嬉しそうね」


「うふふっ、まぁね」


今日は仲の良い別世界の女神ブリメラとお茶会をしています。


久々に良い物を見させて頂きました。


「へぇ~どんな事があったのか、教えてみなさい」


私は先日の事、異世界人理人について話しました。


彼のやった事は神や女神なら誰もが褒めたたえる事です。


悪神や邪神以外が考える善行の一つ……それは『自己犠牲』です。


自己犠牲を見て、善行と受け取らない神など、まず居ないと思います。


今度の召喚での失敗……それは『神代理人』の存在でした。


調べた所、学校の施設のクラスの生徒の召喚をした時に、巻き込まれたのが彼だったのです。


失敗したのは私ではないとは言え、行ったのは私の世界の住人です。


それなりに責任を感じます。


『責任』以前に、異世界から召喚される人間には私の世界で生きられる様に、特別なジョブやスキルを与える。


そういう約束事があります。


ですが……今回はそれが1人分決定的にありませんでした。


あの時、神代理人は『貰える状況』にありました。


彼が、辞退しなければ、特別なジョブやスキルを与えて送り出し、残った女生徒が困る筈でした。


ですが、彼は自分からその権利を放棄し、女生徒に譲ったのです。


きっと他の転移者だったら、納得してくれなかったでしょうね……


だからこそ、私は彼に真摯に向き合い、出来る限りの要望を叶えようと思ったのです。


そして私の世界ルミナスに送り出しました。


その際、神託を卸し丁重に扱うようにしたのです。


結局、彼は城を出て行く事を選びました。


恵まれた人間の中に、一人だけ存在する恵まれない人間。


出て行く気持は解ります。


それなのに……彼は私に供物を備え感謝の気持ちで祈ってきたのです。


本来は送り出した後は手を出してはいけません。


ですが、余りに切なくせめて少しでも力になればとあの世界で唯一私が作った剣と引き合わせました。


私は剣を作る才能は無く、完全な失敗作ですが、あれでも神剣。


少しは役に立つでしょう。


「そうなのね、それであの失敗作の『逃亡剣』をあげたんだ」


「私は武器を作るのは知っての通り苦手です。 あれ一本作って挫折しました。 確かに失敗作で戦うには向いていませんが、逃げる事にかけては一流ですからね」


「まぁ、若返りと逃亡剣、その位ならしてあげても良いのかも……それで、その人のデーターってどんな風に決まったの?」


「まぁ、こんな感じです」


神代理人(15歳) 巻き込まれた者

LV 1

HP 35

MP 25

ジョブ:魔法剣士

スキル:翻訳、アイテム収納(収納品あり)剣術スキル

エクストラスキル:若返り


「そう……イシュタスあんた、随分凄い事するね」


「そうでしょうか?」


「まぁいいや、イシュタスはやっぱり面白いね」


「面白い? 私がですか」


「うん!」


幾ら理由を聞いてもプリメラは何が面白いのか教えてくれませんでした。



◆◆◆


プリメラSIDE


相変わらず、天然なのか、女神としての知能が低いのか……


流石にエクストラスキル:若返りは無いわ。


ただ、若返らせるだけなら、スキルに反映されないよ。


普通の人間が望むのは、1回だけの若返りの筈。


だけど、あの子は、エキストラスキルとして与えてしまった。


恐らく『ある一定の年齢になるか、死ぬと自動的に元の年齢からやり直せる』そういうスキルなんじゃ無いのかな。


一見地味なスキルのようだけど、ある意味『有老不死』


老けるけど、一定の年齢になると若返えるから、死なない。


そういうスキルだわ。


人生経験を積み、死なない。


ある意味、彼女が作り出したのは人知を超えた存在。


簡単に言うなら、人と神の間。


仙人に近い存在になれるパスポート。


それに失敗作の『逃亡剣』


逃亡剣で死にそうになったら逃げ出す。万が一が起きて死んでも、若返って人生を再スタート。


そして、死なない人生を送っていたら、幾つか解らないけど、若返ってまた人生再スタート。


きっと、自分がどんな存在を作ったのか解ってなさそうだわ……


しかし、魔族以外全てを束ねる、一神教の女神って凄いわ。


そんな存在作れるんだから……私じゃ無理だわ。


面白そうだから、気が付くまで黙っていようかな……





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