第3話 異世界 ルミナス


此処が異世界ルミナスか。


レンガ造りの壁に囲まれて少し暗い。


話しからすると王族が呼んだのだからお城の何処か……そう言う事だな。


周りを見回すと、学生たちが静かに座って居る。


その前に、中世の騎士の様な恰好をした大柄な人物がいて、その先にはシルバーブロンドにブルーアイの美しい容姿の美少女が立っている。


多分王女だ。と


その横に居る、恰幅の良い王冠を被っていて椅子に座っている人物が多分王様だ。


「最後の一人が目覚めたようです」


騎士がその様に玉座に報告をすると、王女であろう存在がこちらの方に歩いてきた。


「ようこそ、勇者の皆さん、私はこの国アレフロードの王女マリアと申します、後ろ座っているのが国王ドラド六世です」


ルミナスにある、国の王様と王女と言う事だな。


夢じゃ無く、本当に異世界に来たんだな……俺は、今迄の事が夢じゃなかった…ようやく理解した。


教師の緑川が一歩前に出た。


この生徒たちは2年B組 緑川先生のクラスだ。


この場にいる唯一の大人だ、自分が代表して話すつもりなのだろう。


俺は、見た目は15歳だから大人には見えない。


「こちらの国の事情は女神イシュタスに聞きました。そして我々が戦う必要がある事も。だが私以外の者は人生経験不足な未熟な子供だ。できるだけ安全なマージンで戦わせて欲しい。そして生活の保障と全てが終わった時には元の世界に帰れるようにして欲しい」


緑川先生らしいな。


堅物だが、責任感はしっかりしている。


「勿論です、我々の代わりに戦って貰うのです。戦えるように訓練もしっかりします。そして、生活の保障も勿論しますからご安心下さい。 元の世界に帰れる保証は今の所は出来ません。ですが宮廷魔術師に頼んで送還呪文も研究させる事を約束します」


戦えなければ困るのはこの世界の人間やこの国だ。


召喚して戦わせるのだから生活の保障は当たり前だ。


そして帰る方法は保証してない『研究』するだけ。


何も保証をしていない。


少女であっても王女……上手く誤魔化している。


「解りました、それなら私からは何もいう事はありません、ほかのみんなはどうだ? 聞きたい事があったら遠慮なく聞くんだぞ」


緑川先生……大人の貴方が誤魔化されてどうするよ。


生徒達も色々な事を聞いていたが…駄目だ。


異世界に召喚されて期待と憧れが強いせいか誰も正常じゃない。


誰一人『条件』を良くしようとしている人間は居ない。


話の内容から考えると、どうやらここは魔法と剣の世界、俺の世界で言うゲームの様な世界だった。


そんな世界に召喚され魔王討伐する運命にある。


真剣に交渉しないとまずくなるぞ。


生徒の一人が核心について質問していた。


「僕たちはただの学生です、戦った事も無いし、戦い方も知りません、確かにジョブとスキルは女神様に貰いましたが本当に戦えるのでしょうか?」


俺達は誰も戦争なんて経験してない。


それで戦えるのか……こういう質問が必要だ。


「大丈夫ですよ!ジョブとスキルもそうですが召喚された方々は召喚された時点で体力や魔力も考えられない位強くなっています、しかも鍛えれば鍛えるほど強くなります。この中で才能のある方は恐らく1週間も掛からず、騎士よりも強くなると思いますよ」


俺にはそれが無い。


尤も、だからこそ『戦わない』という事が出来る。


この城から出て行ってから、そこからが俺の本当の生活のスタート。


だが、学生たちは戦う運命にある。


それなのに、今の状況を何故、喜んでいるのか、俺には全く理解できない。


日本での平和な毎日の方が遥かに尊い様な気がする。


もし、『来ない』という選択が出来たなら、俺はきっと強いジョブやスキルを貰ってもこんな所へ来ない。


『平和に過ごせる毎日』『ジョブやスキルがあるが戦う日常』


どちらの方が良いか考えたら間違いなく『平和に過ごせる毎日』だ。


そんな貴重な物を手放してまで異世界に来る意味はあるのだろうか?


たとえ、凄いジョブやスキルが貰えても『戦う運命』なら来たくはない。


「それなら安心です.....有難うございました」


よく考えて見ろよ…今の話の何処に安心がある?


『騎士』じゃ勝てないからお前達が呼ばれたんじゃないのか?


どの位、皆が強いのか解らないが、これ程の数の召喚者じゃないと戦えないのなら……恐らくかなり過激な戦いになるんじゃないか?


『全員が死なない』そんな未来は絶対に無い気がする。


俺はこの世界では一般人だ。


戦わない選択もありだ。


一通り質問が終わった。


「もう、聞きたい事はありませんか? それならこれから 能力測定をさせて頂きます。 測定といってもただ宝玉に触れて貰うだけだから安心してください!測定が終わったあとは歓迎の宴も用意させて頂いております、その後は部屋に案内しますのでゆっくりとくつろいで下さい」


俺は静かに手をあげた。


「俺は巻き込まれただけです……そう女神様に言われました」


「本当にそうです? 確認の為に鑑定をさせて貰えますか?」


「どうぞ」


「それでは……鑑定……えっ?」


神代理人(15歳) 巻き込まれた者

LV 1

HP 35

MP 25

ジョブ:魔法剣士

スキル:翻訳、アイテム収納(収納品あり)剣術スキル

エクストラスキル:若返り


「どうでしたか?」


「本当にそのようですね……解りました、今後の対応についてはこのあと、話し合いをさせて頂きます」


それだけ俺達に伝えるとマリア王女たちは去っていった。



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