第2話 女神イシュタスと......

「貴方が最後の一人ですね……それで、ジョブもスキルも……スミマセン」


女神なのに辛そうな顔でこちらを見ている。


なんだか、申し訳ない気がしてきた。


「無いんですよね?」


つい、譲ってしまったが思ったより不味いのかも知れない。


随分と異世界では必要そうに思える。


「いや、ありますよ! ただ、魔族と戦えるような素晴らしいジョブやスキルが無いだけです」


「普通の物ならある、そういう事で大丈夫ですか?」


「はい......」


なら、そんなに困らないんじゃないか?


「それなら、普通のジョブとスキルを貰って異世界に行けば問題なさそうですね」


「確かにそうなんだけど、凄く苦労しますよ? 向こうの人間は15歳でジョブを貰って頑張って生活していますから……キャリアが違います。だからこそ、異世界人には通常より上のジョブが必要なんです! まして魔族と戦うのですから」


成程、学生なら1~2年位のハンデだけど、42歳の俺は27年のハンデがある。


恐らく普通のジョブやスキルを貰っても向こうの世界の42歳とは相当な差がありそうだ。


俺の場合は本当に不味いな。


なにか、方法は無いか。


「あっ、そうだ俺はジョブもスキルも普通なんだから、魔族と戦わないで良いんですよね?」


「それは、勿論そうですが……それでも、普通に生活するのに困ると思いますよ」


なにか本当に無いかな……そうだ。


「凄くずうずうしいのは解っていてのお願いなのですが、今の歳で無理なら、俺の年齢を15歳相当に下げて貰うのは難しいでしょうか?」


これは本当に図々しい願いだ。


そんな願いを叶えた神様の話など聞いた事が無い。


42歳のおっさんが、15歳になる。


言ってはなんだが、本当に無茶ぶりだよな。


「そうですね、うんそれが良いかも知れません! 私の世界ルミナスで、若返らせてあげるわ……それなら普通の人生が確かに送られるわね。 一応、通常のジョブの中から、好きな物を自由に選ばせてあげるから、そうね、そうしなさい! 無双や俺TUEEEは無理だけど、ささやかな幸せなら手に入るわ……15歳からのやりなおし、私も口沿いするから……それで決まりね!」


「良いんですか?」


「勿論よ! それじゃ、ジョブは此方からどうぞ!」


「ありがとうございます……あの間違いじゃないですか? 魔法戦士、英雄、剣士、魔法使い、かなりの当たりがある様な気がするのですが……」


女神イシュタスが申し訳なさそうな顔になる。


「そう思うよね? だけどね、魔法戦士は器用貧乏、魔法も剣も中途半端、英雄は対人戦は強いけど、魔族相手には余り役に立たない、剣士や魔法使いは1芸みたいな物でそれ以外はほぼ才能が無い……まぁ、普通に暮らすには問題無いんだけどね! 異世界人にあげるには良いジョブじゃないのよ、この世界ではまぁ、まずまずだけど」


折角の異世界なんだから、魔法と剣が使いたい……


「それじゃ、魔法戦士で……」


「はい、魔法戦士ね……あとはスキルね、収納魔法と翻訳は無条件でつくからね……他1つ選んで、魔法や剣の才能は此処でとらなくても努力である程度はどうにかなるから……慎重に選んでね」


これも結構あるな……うん?


これ……有名なスキルじゃないのか……


どこかで読んだ本に書いてあった。


「この強奪スキルって昔読んだ本にあった気がするのですが……」


「ああっ、それね、昔は最強と言われたけど余りに反則的だから、制限がついているのよ! 相手を殺して心臓を握り潰すとランダムに相手のスキルが手に入る……そんな感じに変わったの。それに魔物や魔族から奪えない……そういう制限がついてね……人間からしか奪えないわ」


殺人をしないとスキルが奪えない。


物騒すぎるな。


「イシュタス様から見てこの世界の人間に比べて俺が劣ってそうな事は解りますか?」


「そうね……貴方達と比べてこの世界の人間は体力があるかも?」


「それを補えるスキルはありますか?」


「鍛えれば追い付けるから、スキルに頼らなくても良いと思うけど……そう考えたら無いかもね。そうだわ、魔法は覚えれば良いとして、貴方剣とか使える?」


「学校で習った剣道位です……」


「そう、それなら剣術のスキルなんてどう?」


「じゃぁ、それで……」


「これで多分、ルミナスで普通に生きていけるわ、こんな感じだけど? どうかな?」


神代理人(15歳) 巻き込まれた者

LV 1

HP 35

MP 25

ジョブ:魔法剣士

スキル:翻訳、アイテム収納(収納品あり)剣術スキル

エクストラスキル:若返り


「どうかなって、若返りってスキルが何故かありますよ」


「15歳まで若返らせるって約束したでしょう? また、今の年齢42歳になったら、その瞬間、また15歳に戻るようにしたからね、そのスキルよ」


うん? それって……違うような。


「え~と……」


「さぁ、旅立ちの時間です……さぁお行きなさい!」


俺の体はゆっくりと消えていった。


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