第3話 実践

とは言ったもののどうやったら出世できるかというのがポイントだ。

いかに効率よく出世できるか。


「一番手っ取り早いのは戦争だろうなぁ」


この俺が住んでいる国、帝国は大陸のちょうど中央に位置していて周りを4つの大きな国に囲まれている。


当然、その4か国すべてが敵国で、4つの大国相手に戦い抜いているめちゃくちゃ強い国が帝国なわけだ。まあ逆に言えば帝国は戦争がしょっちゅう起きる。


その戦争である程度の成果を出せたら当然軍内部の位が上がる。

多分これが一番出世できるはずだ。

幸い俺の精神状態は元居た世界と変わっているから平気で人を殺せる。


これが一番効率がいい。

逆にこれ以外の考えが思いつかない。


軍に入れるには18歳以上でないとだめだ。

つまりだいだい2年間は軍には入れない。


つまりこの2年で戦争で手柄を得られるぐらいの力をつけないといけない。

やるべきことは決まった。あとはどんな力をつけるかだ。


この世界には魔法がある。つまり俺が今やるべきは魔法の習得だ。

魔法は剣や弓を使えるようになるよりも全然簡単だ。


魔法を使えるようにするにはまず自分自身の魔法属性を調べないといけない。

自分自身にない属性の魔法はどんなに頑張っても使えない。

こればかりは才能の世界と呼ばれている。


ともかく、すぐに自分の属性を調べてみる。

調べる方法は割と簡単で、自分の魔力を水に込めてできた魔法水に専用の紙を付けたらすぐにわかる。


実際手順通りに行うと紙は黄色と青色が出現した。

これで俺の属性がわかる。この器材の説明書を見るに黄色は電気、青色は水の属性らしい。


水属性単体ならともかく、電気属性との組み合わせはかなり良い。

水と雷を組み合わせると広範囲の攻撃が可能だ。

これなら戦争で重宝される。


それに加えて電気属性単体で自分の身体能力の向上ができるし、電気を使うことで敵を殺さずに気絶させることもできる。

こんな風に考えただけでいろいろな案が浮かんでくる。


となれば後は実際に魔法の練習だ。

幸い前の人間も魔法の練習をしてきたようだ。

少なからず体に魔法の使いからが染みついているはずだ。


「まずは魔法についての本を借りるか」


早速魔法を練習するために本を図書室で借りる。

異世界に来てから図書室に頼りっきりだ。





図書室に行き魔法の本を借りて寮の自室で読み込む。

さすがは図書室というべきか魔法に関する本がたくさんあった。


自分自身がどれを使えばいいかわからないからとりあえず『入門編』を借りてきた。入門編にはまず体内の魔力を正しく制御してうまく扱えるようにしなければいけないと書かれている。


やり方は割と簡単でさっき作った魔法水をもう1回作ってそれを飲む。

そうすればお腹らへんが暖かくなる。

これが魔力らしい。


子の魔力をずっとお腹から動かさずに制御すると今度は暖かくなっている以外の場所を知覚できるようになる。

そして体全体を温めるようにお腹の中心から体の輪郭まで魔力を広げていく。これが魔力の制御の第一歩らしい。


魔力の制御で魔法の暴発やら何やらを防げることができるとこの本には書いてある。まずは基礎錬が大事だ。

ひたすらに魔力の制御を練習する。

一度魔力を知覚できたらあとは魔法水に頼る必要はない。ひたすらに体内にある魔力を制御して一点に集中する。そしてそれを開放して体の各部位に広げていく。これの繰り返しだ。


「魔力を制御ってめっちゃ疲れる」


初めてやる感覚だからか精神的にかなり疲れる。

例えるなら6時間ずっとテストを受けるような感覚。脳がひたすらに糖分を欲しているような感じ。


昨日の処刑を見た帰りに買ったチョコレートを頬張りながら魔法の制御を続ける。正直言って昨日の処刑を見た帰りに呑気にお菓子を選んでいる時点でかなりこの世界の倫理に引っ張られているような気がするが今はどうでもいい。


「このチョコレートも転移者の産物なのかなぁ」


なんて独り言を言いながら夜遅くまでひたすら魔力の制御を続けた。





翌朝、目が覚めると朝の7時半だった。

元居た世界なら遅刻かもしれないがこの世界は教室まで10分もかからないから全然問題ない。ゆっくりとベッドから起き上がって学校に行く準備をする。


「腹筋が筋肉痛…」


昨日の魔力の制御の時、変にお腹に力を入れていたせいなのか絶賛筋肉痛だ。この体が今まで全然鍛えていないのが容易に想像できる。


「いってきます」

「いってらっしゃーい」


寮の管理人に声をかけて学院に登校する


学院の授業はちゃんと聞きつつ昼休みは図書室に通い詰めて魔法について勉強。そして放課後、寮に帰ってから部屋で勉強してきたことを実践してみる。


そんな毎日を過ごしていたところいつの間にか魔力の制御がほぼ完璧になるまで仕上がった。


となると次に実際に魔法を発動してみたくなる。

調べてみたら魔法の発動するには言霊や魔法陣が必要らしい。無声で魔法を発動させるのも可能ではあるらしいが、難しすぎてよくわからなかった。

ひとまず簡単な言霊を使う方法で魔法を発動してみる。


「『ウォーターボール』」


すると球体の水の球が宙に出現した。

個人的に割と感動している。実際に人生で初めて魔法を使ったというのもあるだろうが単純に自分がやってきたことが実を結んだという事実がひたすらにうれしい。


それからはもっと魔法を覚えたいなんて考えてひたすらに魔法の本を読んで読んで読み漁る。ほぼ毎日、図書室に入り浸っていたと思う。


ひたすらに魔法を調べて寮に戻っては実践してみて、失敗してそれを繰り返す。

一回雷の魔法が失敗したときは焦った。部屋の中が急に明るくなったかと思ったらまるで稲妻が走ったかのように体に衝撃が入って動くことすら大変だった。

まあ、実際に体に稲妻が走っているから生きているだけでもありがたい。


そしてその失敗を経験して1つ気が付いたことがある。

俺には電気に対する耐性があるのではないか?というものだ。


よくよく考えてみたら乾燥している時期の静電気が気にならないし、試しに微弱な電気を体にぶつけても何にもならなかった。


ということは俺には電気の体制がついていて、俺は手に電気を身を纏わせた攻撃とかもできるようになった。これは大きな収穫だ。



そんなこんなで毎日図書室にこもって、実践して、失敗して、また新しい収穫を得てを繰り返していたら、いつの間にか2年の年月が過ぎていた。

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